研究課題
近赤外光の時間分解計測の特徴を活用して、食品・飲料,野菜・果実等の生のサンプルをそのまま簡単に処理する方法で活性酸素に対する抗酸化活性を多面的に評価する手法の開発研究を行った。(1)励起状態分子内電子移動消光とは異なる発光ON/OFF機構を応用した新たな近赤外発光性活性酸素検出プローブとして、ラジカルを捕捉して安定ラジカルとなるスピントラップを置換基に有し、かつ近赤外領域に発光を示すBODIPYを設計し、合成を試みた。このプローブは、ヒドロキシルラジカル等を捕捉すると項間交差が促進され蛍光を消失するとともに、ESRで特徴的なスペクトルを示すスピンアダクトとして検出可能となる二重の特性を有する高機能プローブとなる。合成ルートを検討の結果、最終目的物の前駆体である発光性分子を微量得ることに成功した。今後さらに合成反応条件を検討することで、目的分子が得られることが期待できる。(2)一重項酸素消去活性について、近赤外光発光寿命計測により果実の品種,部位による差異の定量に関する検討を行った。市販のゴールドキウイ及びグリーンキウイをサンプルとし、それぞれ果肉部,芯,種子,皮を分離・破砕し,それぞれ食材向けに開発した4種類の抽出溶媒を用い同一の処理・計測法で活性評価を行った。結果、皮の活性が高く,種子,果肉,芯の順となる結果が得られ、含有される抗酸化物質の種類・量の知見との一致が見られた。また、抽出溶媒の極性による活性値の差異から、試料中の有効成分の分布に関する示唆が得られた。農作物の品種,産地,個体,部位による活性の差異,有効成分分布などを簡単な操作で定量し比較検討できる手法となると考えられる。
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