研究課題/領域番号 |
18K05534
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 充 九州大学, 農学研究院, 助教 (70584209)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | MALDI-MS imaging / ポリフェノール / 腸管吸収 / 代謝 |
研究実績の概要 |
本研究では、MALDI-MSイメージング法を基本技術として、ポリフェノール類の吸収・代謝動態を視覚的に網羅することを目的としている。昨年までの研究において、腸管内ポリフェノール類の可視化のためのMALDI-MSイメージング法の最適化を実施し、非吸収性の機能性ポリフェノールであるtheaflavin-3’-O-gallate (TF3’G)および、そのモノマー構成単位であり腸管吸収可能なepicatechin-3-O-gallate (ECG)について、当該化合物が腸管組織に取り込まれ、そのままの形で吸収されることを可視化するに至っている。本年度は、それら化合物を対象として、腸管組織内における代謝挙動を、可視化することを試みた。 申請者らがこれまでに設定したポリフェノールMALDI-MS検出のために最適化した条件(Nifedipineとフィチン酸を併用)を用いることで、Ussing Chamber透過試験後の小腸組織切片において、組織に取り込まれたECGに加え、その硫酸化体、メチル化体およびその両方の代謝物が可視化された。グルクロン酸抱合体については、可視化されなかった。 一方で、同様に腸管組織に取り込まれることが確認されたTF3’Gについては、メチル化体がわずかに検出されたものの、その他の抱合体代謝物(硫酸化体およびグルクロン酸化体)は、検出されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MALDI-MSイメージング法を基本技術として、ポリフェノール類の吸収・代謝動態を視覚的に網羅する「ポリフェノール類の体内吸収・代謝プロセスの可視化とin situ評価法」の構築」を目的として、今年度は「ポリフェノール類の腸管代謝動態の可視化」を目標とした。それに対して、分析対象ポリフェノール類とし用いたECGおよびTF3’Gの代謝物としては、ECGの硫酸化体およびメチル化体が可視化され、TF3’Gの代謝物は可視化されなかった。したがって、本法はポリフェノール類の腸管での代謝過程を可視化可能であること、さらに、TF3’Gは腸管代謝に対して安定であることを実証するに至った。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度において確立した腸管 in situ MALDI-MS imaging法を用いて、経時的な代謝挙動の解明や、組織内に取り込まれた後の成分の動態(体外排出挙動など)、さらには、その他のポリフェノール類への応用など、本法の汎用性と有用性の実証を目指す。
|