研究課題/領域番号 |
18K05535
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
山崎 渉 宮崎大学, 農学部, 准教授 (70393262)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 蛍光LAMP法 / クロアカ / 盲腸便 / カンピロバクター / インフルエンザウイルス |
研究実績の概要 |
出荷時および食鳥処理時にカンピロバクター陽性・陰性の鶏群を簡易・迅速かつ正確に鑑別できるシステム開発のために、研究代表者らが開発済の鶏クロアカ(養鶏場における出荷時の区分処理を想定)と鶏盲腸便(食鳥処理場での即時鑑別を想定)からのカンピロバクター直接検出法(濁度LAMP法を基盤)を蛍光LAMP法に応用した。 培養法との比較:鶏盲腸便に対して、本法の結果は完全に一致し、診断的特異度・診断的感度はともに100%を示した。鶏クロアカに対しては、診断的特異度は100%を示す一方で、診断的感度は93%を示した。 濁度LAMP法との比較:鶏クロアカに対する診断的感度が10%改善されるとともに、他の値はいずれも同じ100%と高い診断力を示した。検出所要時間は両サンプルいずれも有意に短縮された。 現場即時診断の実現にせまるために、SDBS(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を用いた新規簡易核酸抽出法を鶏クロアカ(同菌を人為的に添加)に対して実施し、性能評価を試みた。しかし、リアルタイムPCR法による遺伝子増幅は確認できなかった。SDBSでは、鶏クロアカ内に存在すると示唆される遺伝子増幅阻害物質は不活化できない可能性が示唆された。 同菌よりも核酸抽出がより簡易に可能なインフルエンザウイルスを対象として、微量ウイルス濃縮技術(Micro-amout of Virion Enrichment Technique, MiVET)の開発を試行した。PBSと野鳥便に同ウイルスを添加し、同法を実施したところ、それぞれ少なくとも100倍、10倍の濃縮性能が確認された。本法のさらなる改良と同菌への応用により、サンプル中に存在する遺伝子増幅阻害物質の影響を緩和し、効率的な直接遺伝子検出(さらには環境中の微量微生物の濃縮検出)が実現できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光LAMP法を基盤とする鶏クロアカ(養鶏場における出荷時の区分処理を想定)と鶏盲腸便(食鳥処理場での即時鑑別を想定)からのカンピロバクター直接検出システムが、高い迅速性・診断力を示すことを明らかにできたため。
また、微量ウイルス濃縮技術(Micro-amout of Virion Enrichment Technique, MiVET)のプロトタイプの開発に成功した。今後のさらなる改良により、環境中の様々な微量微生物の濃縮検出の実現が期待できる。さらに、当初想定していた鶏クロアカからの新規簡易核酸抽出法は予想どおりの結果が得られなかったが、その代替法として、本技術が利用できる可能性が示唆されたため。
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今後の研究の推進方策 |
様々な動物サンプルからカンピロバクターを含む微生物の簡易核酸抽出ができる技術の開発を継続する。
本研究において、プロトタイプ確立に成功した微量ウイルス濃縮技術の改良をさらに重ね、環境中の微量微生物(カンピロバクターを含む)の濃縮検出システムを新開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定していたほどの消耗品を必要としなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度の消耗品購入や研究補助員雇用による研究推進に充当する予定である。
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