研究課題/領域番号 |
18K05537
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
坂井 隆浩 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助教 (10418618)
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研究分担者 |
今井 純 高崎健康福祉大学, 薬学部, 准教授 (30342918)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エルゴチオネイン / 酸化ストレス / 活性酸素 / トランスジェニックマウス / 抗酸化物質 |
研究実績の概要 |
本研究は、エルゴチオネイン(EGT)を内在的に生合成するトランスジェニック(Tg)マウスの開発を目指している。バクテリア由来のEGTは、5つのEGT合成酵素によって生合成される。しかしながら、バクテリアのEGT合成酵素遺伝子はGC含量が著しく高いため、これらの遺伝子を哺乳類細胞に導入してもEGTが生合成されない可能性が高い。このことから本研究では、まず初めに、これら5つのEGT合成酵素遺伝子のGC含量を哺乳類細胞仕様に最適化した遺伝子発現ベクターを構築し、HEK293T細胞に遺伝子導入した。しかしながら、これら5つのEGT合成酵素遺伝子の発現量が均一に行われないと、EGTの生合成が安定的に行われないことが明らかになった。このことから、これら5つのEGT合成酵素遺伝子を均一に発現させるために、これらが1つのOpen Reading Frameとして読まれた後、ユビキチン(Ub)特異的プロテアーゼによってプロセシングを受けるUb-GG-Linker配列を、各EGT合成酵素遺伝子間に設置したマルチEGT合成酵素遺伝子発現ベクターを構築した。しかしながら、これをHEK293T細胞に遺伝子導入した結果、5つのEGT合成酵素間の切断が上手く行われず、EGTの生合成は行われなかった。そこで、ribosomal skippingに基づいた2A peptideを、各EGT合成酵素遺伝子間に設置したマルチEGT合成酵素遺伝子発現ベクターを作製し、HEK293T細胞に遺伝子導入した。その結果、5つのEGT合成酵素遺伝子が均一に発現し、さらにEGTが生合成されていることを確認した。これらの結果から今年度は、マルチEGT合成酵素遺伝子発現ベクターをC57BL/6系統の受精卵にマイクロインジェクションし、EGT-Tgマウスの作出を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度に構築したマルチEGT合成酵素遺伝子発現ベクターをHEK293T細胞に遺伝子導入し、これらの遺伝子発現を確認した後、LC/MSによってEGTが生合成されていることを確認した。次に、マルチEGT合成酵素遺伝子発現ベクターをC57BL/6J系統の受精卵にマイクロインジェクションし、EGT-Tgマウスの作出を試みた。その結果、これらを仮親の子宮に移植したところ19匹の産仔を得た。さらに、離乳した産仔の体細胞を採取し、EGT合成酵素遺伝子の有無を確認したこところ、これらが挿入されている9匹のファウンダーマウス(F0)を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
F0マウスと野生型マウスを交配することにより、F1マウスを作出する。これらのF1マウスの体細胞を採取し、EGT合成酵素遺伝子の発現量を定量すると共に、生合成されたEGTを定量する。これらの一連の実験によって、EGT-Tgマウスを樹立する。さらに、EGT-Tgマウスに酸化ストレスを誘導して、EGTが酸化ストレスに及ぼす影響を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、計画したEGT-Tgマウスの作出において、今年度はファウンダーマウスを作出する工程まで実施することができた。その一方で、ファウンダーマウスを作出できたのが年度末であったため、これらの作出に費やした費用の支払い期日が、次年度になってしまった。そのためこれらの費用を次年度に繰り越した。
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