研究課題/領域番号 |
18K05538
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
岩田 直洋 城西大学, 薬学部, 助教 (50552759)
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研究分担者 |
日比野 康英 城西大学, 薬学部, 教授 (10189805)
岡崎 真理 城西大学, 薬学部, 教授 (50272901)
神内 伸也 城西大学, 薬学部, 准教授 (80433647)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機能性食品 / 血栓 / 脳梗塞 / 酸化ストレス / 抗血栓薬 |
研究実績の概要 |
脳梗塞に代表される虚血性脳血管障害は、我が国の死亡原因の上位に位置しており、発症にはアテローム性動脈硬化などによる血栓の形成が関与している。その治療は主として発症後の血栓溶解療法に限られているが、発症の正確な予測が困難であることや薬剤による適応時間の制約などから薬物による根治は難しく、一次予防が重要である。また、再発しやすいことから抗血栓薬による二次予防が行われているが、副作用の観点から常に管理が必要であると共に食事による薬効への影響も考慮する必要がある。そこで本研究は、日常的な摂取による予防を目的に抗血栓効果を有する機能性食品を探索し、血栓性脳梗塞への効果を評価することを目的とした。 初年度にフィブリン凝固抑制作用を有する食品としてスクリーニングした椎茸菌糸体培養培地抽出物(以下、椎茸菌糸体抽出物)を用いてin vivo実験にて評価した。ラットに椎茸菌糸体抽出物(1 g/kg)を2週間経口投与した後、頸動脈を剥離し、40%塩化鉄を曝露して血栓形成を誘導した。また、ポジティブコントロールには抗凝固薬であるワーファリン単回投与(0.2 mg/kg)群を作製した。その結果、コントロール群では、塩化鉄曝露によって血栓が確認されたのに対し、ワーファリン群では顕著な抑制が見られた。しかし、椎茸菌糸体抽出物では血栓の抑制は認められなかった。そこで、動脈硬化様症状を呈するL-NAME処置ラットを作製し、塩化鉄曝露処置にて評価した。その結果、動脈硬化様症状を呈するラットに椎茸菌糸体抽出物を投与しておくことで血栓が顕著に抑制されることが明らかになった。一方で、副作用については、血液凝固時間の指標となるプロトロンビン時間および止血時間について評価した結果、特に問題はみられなかった。以上の結果から、椎茸菌糸体抽出物の継続的な摂取は動脈硬化発症時において、血栓形成を抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実施項目として以下の4項目を計画しており、①in vitro実験によって抗血栓効果を有する食品・食品成分を探索・評価する。②スクリーニングした候補食品・食品成分を用いて、in vivo実験によって抗血栓効果を評価する。③抗血栓効果を有する機能性食品と抗血栓薬との併用により薬効の影響を評価する食品-薬物相互作用を明確にする。④機能性食品同士の併用による相互作用を判定することで薬物の代替と成り得る予防および治療の方法を確立することを計画した。 今年度は中盤に当たる年度で②の項目について実施し、スクリーニングした食品を用いて、血栓形成モデルラットに与える抗血栓効果を評価した。しかし、当初の想定よりもモデルラットの条件検討に時間がかかったこと、また、実験の進捗状況から動脈硬化様症状を呈するモデルラットの作製が必要となった。さらに、③の項目を実施するに当たり、薬剤の評価が必要となったことから①の項目について追加で検討する必要が生じた。 以上のことから、当初の計画よりもやや遅れが認められているが、次年度は当初の計画通り、③および④の項目を実施していく。
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今後の研究の推進方策 |
申請書の最終年度に当たる次年度は、上記の進捗状況欄に記入した項目より、③抗血栓効果を有する機能性食品と抗血栓薬との併用により薬効の影響を評価する食品-薬物相互作用を明確にすることを目的に実施する。血栓症の再発防止を目的とした治療には、ワーファリンなどのような抗凝固薬による投薬が必要であるが、食品中の成分(ビタミンKなど)によって影響を受けることが知られており、薬剤自身の副作用以外にも服用には注意が必要となっている。これまでに、ワーファリン高濃度処置において抗血栓作用を示すとともに副作用が発現することを確認していることから、食品-薬物摂取時において薬剤の用量を減少しつつも抗血栓効果を維持できる相互作用として安全に用いられる条件について判定する。また、④機能性食品同士の併用による相互作用を判定することで薬物の代替と成り得る予防および治療の方法を確立することを計画しており、これまでにスクリーニングして有効であった食品の併用を計画している。③および④の評価方法においては、初年度および今年度実施した方法を用いて実施する。 以上の研究計画は、これまで通り各実験項目の分野に精通した共同研究者を責任者とし、実験経過や成果について充分な協議、考察の上で研究を推進し、かつ問題点に対処していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の申請書より購入計画にあった機器(スポット光源;実験動物の血栓形成に使用)の発注が、今年度の実施状況から遅れたことに加え、機器の納期までに時間がかかったことで実験の進捗状況にやや遅れが生じた。従って、当初購入予定にあった消耗品数の減少および変更が認められたため、申請より繰越金が生じた。次年度は、本研究における最終年度となることから、今年度の繰越金は試薬等消耗品購入にあてる予定である。また、実験内容は、当初の申請書通りの計画で実施する。
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