クローン病や潰瘍性大腸炎に代表される炎症性腸疾患が急増しており、QOLを大きく低下させることから大きな社会問題になっている。これまで、ある種の乳酸菌が腸管樹状細胞への機能発揮から制御性T細胞(Treg)を増加させ、マウスDSS誘導大腸炎を軽減させることが明らかになっている。また、この乳酸菌認識にC型レクチン受容体ファミリー分子が関与する可能性が示されている。本年度は、具体的なCLRファミリー分子を特定するために単一のCLRを発現させたレポーター細胞やCLR-Fcキメラタンパク質を作成し、CLRの探索を行なってきた。その結果、着目していた乳酸菌に関しては具体的な受容体は不明であるものの、他の乳酸菌においてCLRの一つであるMincleと反応する乳酸菌を新たに発見した。さらに、この乳酸菌をマウスに与えることによる腸管T細胞分化への影響について検討したところ、Tregを増加させることが明らかとなった。その一方、ランダムに供試したMincleと反応性を持たない3菌株の乳酸菌についてはTreg誘導能が認められず、さらにTh1、Th2、Th17といったT細胞への影響も認めていない。その他、CLR-Fc を用いた実験においてMincle以外のCLRと乳酸菌との結合を一部認めており、これらについても現在解析中である。乳酸菌は複合体であるため自然免疫受容体であるTLRなど、CLR以外の受容体にも認識され免疫応答を活性化することが想定されるが、CLRがTreg誘導に直接的に関わっているのか、そして乳酸菌の何が認識されるのかを明らかにしていくことで、乳酸菌のTreg誘導を介した抗炎症作用の詳細が明らかになると考えられる。
|