研究課題/領域番号 |
18K05542
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研究機関 | 千里金蘭大学 |
研究代表者 |
長井 薫 千里金蘭大学, 生活科学部, 教授 (20340953)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機能性食品 / 認知症予防 / ミトコンドリア / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
本年度は、食品由来成分として不飽和脂肪酸を含有するリン脂質類と、クラスⅢヒストン脱アセチル化酵素(Hdac)活性化作用を有するニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)について、ミトコンドリア増強作用とそれに基づく神経系保護作用に関して検討を行った。 リン脂質については、脂肪酸部分に不飽和脂肪酸を有するホスファチジルコリン、およびホスファチジルエタノールアミンの一部にミトコンドリア増強作用があること、また、酸化ストレスからの神経系細胞保護作用を有することを見出した。しかし、ミトコンドリアに対する作用と細胞保護作用の程度は必ずしも一致せず、それぞれの関連についても現在検討中である。これらリン脂質のHdac阻害作用については、低級脂肪酸類のような阻害作用は認められなかった。 NMNについては、クラスⅢHdacであるサーチュインの活性化を介して、ミトコンドリア増強および酸化ストレスからの神経系細胞保護効果を有することを見出した。また、ミトコンドリア増殖因子の発現抑制が細胞保護効果の低下につながることから、ミトコンドリア増強作用が細胞保護において重要であることを明らかにした。さらに、ミトコンドリア内の抗酸化たんぱく質であるSOD2の発現上昇およびサーチュイン活性化を介した活性化を示唆する結果を得ており、NMNは細胞質およびミトコンドリアでのサーチュインを活性化することで酸化ストレスに対する保護効果を示すことを示唆する結果を得ている。(論文投稿中)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リン脂質類については、ミトコンドリア増強作用と酸化ストレスからの神経系細胞保護作用について、構造と作用について検討を行えた。作用機序についてはHdac阻害作用ではないと考えられるため、今後の課題である。NMNについてはサーチュイン活性化によってミトコンドリア増強と細胞保護が達成されており、ミトコンドリア増強が酸化ストレス抑制に重要な機構であることを示す結果が得られた。以上の進捗状況から、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
リン脂質類については、ミトコンドリア増強作用と酸化ストレスからの保護効果は観察されたものの、Hdac阻害作用は検出されず、またそれぞれの作用に関する分子機構も現在のところ分かっていない。この分子機構について、ミトコンドリア増殖因子であるPGC1αの活性化機構とリン脂質が活性化し得る細胞内シグナルに注目して解明を試みる。 Hdac阻害については、リン脂質に阻害作用が認められなかったことから、阻害作用が報告されているポリフェノール類や脂肪酸類などに注目し、ミトコンドリア増強作用と神経系細胞保護効果について検討を行い、食品成分によるHdac阻害がミトコンドリア増強と神経保護作用につながることを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の異動に伴い、新しい所属先の設備の関係から次年度の解析予定や必要機器の拡充を考え、物品費に関して当初の予定より節約することとなった。 本年度は、この物品費を合わせて、進捗に合わせた分子機構解析のためのキット類等の比較的高額な物品について、昨年度分を合算することにより揃えていく予定である。
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