研究課題/領域番号 |
18K05545
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
竹下 典男 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20745038)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糸状菌 / 菌糸 / アクチン / エキソサイトーシス / カルシウム |
研究実績の概要 |
糸状菌の菌糸生長において菌糸先端でのアクチンの重合・脱重合とエキソサイトーシスが必須である。近年、私たちは細胞内のカルシウムイオン濃度の変化により、これらアクチンの重合・脱重合とエキソサイトーシスが協調的に制御されていることを示した。このように周期的に徐々に菌糸を伸ばす一連の動的機構を、ここでは菌糸生長の躍動性と呼ぶ。Ca2+の流入に関わるチャンネルの破壊株の表現型から、この躍動性が正常な形態の菌糸生長に必要であることが示された。この躍動性の生物学的意義として、外的シグナルにより早く応答し、菌糸生長の速度や方向が制御されるのではないかという仮説に至った。この仮説を検証することを目的とし、その分子機構について、また外的シグナルに対する躍動性の変化について解析することで、仮説を検証する。 ①躍動性に関わる分子機構 Ca2+の一時的な流入によりCamKの標的がリン酸化され、アクチンの重合、エキソサイトーシスに関わる可能性があるため、Calmodulin-dependent kinase, CmkA, CmkB, CmkCにGFPを付加した融合タンパク質を発現する株を構築する。それぞれの細胞抽出液に対してGFP抗体によるGFP-Trapを行い相互作用するタンパク質群を精製する。それらをLC-MS/MSの質量分析にかける事で、CmkA, CmkB, CmkCと相互作用するタンパク質群(リン酸化ターゲット)を明らかにする。 ②外的シグナルに応答した躍動性の変化 Ca2+チャンネルの活性化における膨圧を想定した浸透圧ストレス、Ca2+濃度、マイクロマニピュレーターによる物理的接触などを与え、菌糸生長の躍動性、即ち、アクチンの重合、エキソサイトーシス、Ca2+の流入、菌糸生長を、蛍光イメージングにより測定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①躍動性に関わる分子機構 Calmodulin-dependent kinase, CmkA, CmkB, CmkCにGFPを付加した融合タンパク質を発現する株を構築した。それぞれの細胞抽出液に対してGFP抗体によるGFP-Trapを行い相互作用するタンパク質群を精製した。それらをLC-MS/MSの質量分析にかける事で、CmkA-GFPと相互作用するタンパク質群を明らかにした。CmkB-GFP, CmkC-GFPを発現する株でも同様の実験を行ったが、タンパク質量が少ないことが原因で相互作用するタンパク質群を同定することは出来なかった。qRT-PCR により CmkA, CmkB, CmkCの発現量を調べたが、それぞれ同程度に発現していた。 ②外的シグナルに応答した躍動性の変化 浸透圧ストレスとCa2+濃度変化による躍動性の変化について解析を行った。また、共焦点顕微鏡ベースでポイントレーザーを使う事で細胞の目的部位にストレスを与えることが可能になった。その際の、躍動性の変化、即ち、アクチンの重合、エキソサイトーシス、Ca2+の流入、菌糸生長を、蛍光イメージングにより観察し、解析している。実験系は確立できたので、データ量を増やしてさらに解析を深めていく。
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今後の研究の推進方策 |
①躍動性に関わる分子機構 Calmodulin-dependent kinase, CmkA, CmkB, CmkCにGFPを付加した融合タンパク質を発現する株を構築した。それぞれの細胞抽出液に対してGFP抗体によるGFP-Trapを行い相互作用するタンパク質群を精製した。それらをLC-MS/MSの質量分析にかける事で、CmkA-GFPと相互作用するタンパク質群を明らかにした。CmkB-GFP, CmkC-GFPを発現する株でも同様の実験を行ったが、タンパク質量が少ないことが原因で相互作用するタンパク質群を同定することは出来なかった。qRT-PCR により CmkA, CmkB, CmkCの発現量を調べたが、それぞれ同程度に発現していた。CmkB-GFP, CmkC-GFPでGFP-trapが上手くいかない理由は不明であるが、スケールアップしタンパク質量を計りながら質量分析に回していく予定である。 ②外的シグナルに応答した躍動性の変化 浸透圧ストレスとCa2+濃度変化による躍動性の変化について解析を行った。マイクロマニピュレーターによる物理的接触を試みたが、予想していたよりも作業が難しいため、中止している。その代わり、共焦点顕微鏡ベースでポイントレーザーを使う事で細胞の目的部位にストレスを与えることが可能になった。その際の、躍動性の変化、即ち、アクチンの重合、エキソサイトーシス、Ca2+の流入、菌糸生長を、蛍光イメージングにより観察し、解析している。実験系は確立できたので、データ量を増やしてさらに解析を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度にGFP-trapと質量分析によりCmkA-Cと相互作用するタンパク質群を明らかにすることで、次の計画に移る予定であったが、CmkAとは相互作用するタンパク質群を明らかにできたが、CmkB,Cについてはまだ明らかになっていないため。
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