研究課題/領域番号 |
18K05547
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
兼森 芳紀 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40529088)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マウス / 精子 / 先体 / 超解像顕微鏡 |
研究実績の概要 |
哺乳動物では、遺伝子変異や環境ストレスなどにより頭部が複数のタイプに変形した精子(多形化精子)が産生されることがある。正常精子と形態が異なる多形化精子は、卵子との受精率が著しく低いため、不妊治療の現場で大きな障害となっている。精子多形化の原因究明―関連遺伝子の同定やそのタンパク質の生理機能の解明―は、単に基礎的な学術知見の集積だけでなく、不妊精子の選別など畜産や医療分野への応用研究につながると考えられている。平成30年度は、精子多形化に関わる遺伝子ACRBPに着目し、その遺伝子欠損マウスを用いて以下2つのことを解析した。 ①ACRBP欠損精子の雌性生殖器内での遡上 ACRBP欠損の精子は、形態の異常度に応じて4つのタイプに分類される。それぞれの精子タイプの雌性生殖器内での存在を調べたところ、野生型の形態に近いタイプ1は子宮から卵管まで遡上していた。一方で核や先体が崩壊しているタイプ4は、子宮のみで観察され、卵管まで遡上できないことが判明した。これらの結果から、精子頭部の形態とその遡上に必要な運動性に相関があることが示唆された。 ②超解像顕微鏡による精子先体タンパク質の局在解析 ACRBP欠損精子の頭部多角化が生じる原因を明らかにするため、超解像顕微鏡をもちいて先体タンパク質の詳細な局在を調べた。野生型精子ではACRBPを含む先体タンパク質は先体顆粒内でドット状のリング構造を形成していた。一方でACRBP欠損精子ではそのリング構造が崩壊しておりそれぞれのタンパク質が分散していた。これらの結果から、精子の多形化の原因に、先体顆粒内のリング構造が関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ACRBP欠損マウスの雌性生殖器内の遡上機構に関して、成果を発表できた。また、精子多形化に先体顆粒内のリング構造が関与することを見い出したことは、本研究課題を遂行する上で大きな進捗となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、当初の計画どおり進めていく。具体的にはACRBP欠損精細胞での核や先体の形態多形化が起きる時期を明らかにするため、形態を詳細にモニターできる実験システムを樹立する。精細胞の形態維持には、アクチン細胞骨格構造が重要である。特にACRBP欠損精細胞の場合、核と先体を連結するAcroplaxome構造の異常が見られる。したがって、Acroplaxomeをモニターすれば、精細胞の形態異常が起こる時期を特定できると考えている。Acroplaxome主成分のアクチンに着目し、アクチン可視化マウス(Lifeact精巣発現マウス)を継続して作製していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
なし
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