研究課題/領域番号 |
18K05552
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
杉本 健吉 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20240765)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 栓球細胞 / 細胞外小胞 / マイクロRNA / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
・栓球細胞(FUHEN)が細胞外分微粒子(Extra cellular vesicles, EVs)を産生し,この微粒子が哺乳類血小板と同じようにCD41陽性である事を,作製した抗CD41抗体を用いてWestern blottingやフローサイトメータに等により明確に示した。両生類栓球細胞がCD41陽性の微粒子を産生する事と,哺乳類巨核球がCD41陽性の血小板を産生する事と対比させると,この微粒子が哺乳類の血小板へと進化していった可能性を示唆すると考えられる。 ・FUHEN細胞由来の微粒子の直径はおよそ100nmであった(電子顕微鏡観察)。栓球細胞からのCD41陽性微粒子の放出は栓球細胞への物理的なダメージにより誘導された。単離したCD41陽性EVの中に各種のmicroRNAが存在する事をマイクロアレイチップを用いた解析およびqPCRによる解析により明らかにした。 ・アフリカツメガエルのCD41に対する抗体を作製し,血液および脾臓細胞からもCD41の微粒子が産生(放出)されていることをフローサイトメーターを用いた解析により明らかにした。これらのことから,栓球細胞からのCD41微粒子の産生は,両生類に一般的であると考えられる。 ・そこでCD41陽性の微粒子放出が,他の動物でも起こりえる事なのかを明らかにするために,ニワトリのCD41に対する抗体を作製し,ニワトリの脾臓細胞からもCD41陽性の細胞外微粒子が産生されていることを明らかにした。また,この微粒子にもマイクロRNAが含まれていた。これらのことから,栓球細胞によるCD41陽性微粒子の産生は,鳥類にも共通の事象であると考えられる。(一部を日本分子生物学会でポスター発表) ・蛍光標識したCD41陽性微粒子はマクロファージ等に取り込まれた。内包するマイクロRNAがマクロファージにシグナルとして受け渡されている可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・今年度の成果により,FUHEN細胞がCD41陽性の細胞外微粒子を産生し,この中に多くのmicroRNAが含まれることを明らかにできた。さらにこれがマクロファージに受け渡されていることも明らかにできた。これらのことから,CD41陽性のEVsの内包するmicroRNAがシグナル分子として止血に関わる可能性を強く示唆する事が出来た。さらにこれが両生類に限らず,鳥類でも同様にCD41陽性の微粒子が存在している事を示せたので,CD41陽性の微粒子は栓球細胞をもつ動物に共通の事象である可能性が高い。これらの展望が開けたため,おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
・ツメガエル,鳥類のもつCD41陽性微粒子およびCD41陽性のマウスの血小板を大量に集め,そのマイクロRNAを網羅的に解析する事より,ここに含まれるmicroRNAに共通性があるかを解析する。 ・マクロファージに取り込まれたマイクロRNAが,マクロファージの遺伝子発現をどのように変化させるか,また変化があるとしたらそれはどのような生物学的意義があるかの解明を目指す。 ・変化する遺伝子が有るとしたら,EV中のマイクロRNAとどのような相互作用があるかを解明する。
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