研究課題/領域番号 |
18K05555
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
加藤 晃 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (80283935)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 転写開始点 / 植物コアプロモーター / イニシエーター / ゲノムワイド解析 |
研究実績の概要 |
2018年度にシロイヌナズナを対象として行ったin silico解析を、イネ、タバコ、バラを対象としても行い、各植物種のデータセットに含まれる全遺伝子の転写開始点周辺の塩基比率を算出し、その傾向を比較した。その結果、TATA-boxとイニシエーター(Inr)のYRルールは植物種間で高度に保存されていた。転写開始点の分散度と遺伝子の発現量の関係では、高発現遺伝子には収束型が多く、これらの遺伝子では特にTATA-boxが保存されていた。一方で、TATA-boxを有していても転写開始点が分散している遺伝子や逆にTATA-boxがなくても収束している遺伝子も多く存在しており、転写開始点の収束にはTATA-boxだけではなく、他の要因も重要である可能性が考えられた。また、InrのYRルールは転写開始点の収束型、分散型を問わずほぼ全ての遺伝子の転写開始点の直上に認められたが、この中で、YRルールの周辺配列に着目すると、例えば-1がC、+1がAのCAパターンでは-2にはTが多く、+3はAとTが多く+4はCが多い傾向が認められた。このようにInrとして働くためにはYRルールだけではなく、その前後の塩基も重要である可能性が考えられた。TATA-boxとInrとの距離を比較すると、シロイヌナズナとイネでは-33、タバコでは-33から-32、バラでは-32であり、TATA-boxと転写開始点、つまりInrの間には適切な距離があると考えられた。また、これら知見を実験的に検証するために、一過的にプラスミドDNAをシロイヌナズナプロトプラストに導入後、RNAを精製し、定量PCRによって転写されたmRNAを定量するとともに変異等の導入による転写開始点変化の有無を5’RACE法により確認する実験手法を立ち上げた。対象とするプロモーターは、35Sプロモーターに加えて内在遺伝子プロモーターを追加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までにシロイヌナズナを対象として行ったin silico解析を、イネ、タバコ、バラを対象としても行い、シロイヌナズナで得られた結果と比較した。その結果、TATA-boxとイニシエーター(Inr)のYRルールが植物種間で高度に保存されていること、転写開始点の分散度合いと遺伝子の発現量の関係では、高発現遺伝子には収束型が多く、これらの遺伝子では特にTATA-boxが保存されていること、転写開始点の収束にはTATA-boxだけではなく、他の要因も重要であること、Inrとして働くためにはYRルールだけではなく、その前後の塩基も重要であること、TATA-boxと転写開始点、つまりInrの間には適切な距離があることなど、多くの知見を明らかとした。また、これら知見を実験的に検証するために、一過的にプラスミドDNAをシロイヌナズナプロトプラストに導入後、RNAを精製し、定量PCRによって転写されたmRNAを定量するとともに変異等の導入による転写開始点変化の有無を5’RACE法により確認する実験手法を立ち上げるなど、当初の予定どおり研究が進展している。一方で、実際の評価実験の多くは未実施であり、その点に関しては、最終年度に精力的に行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までにシロイヌナズナを対象として行ったin silico解析を、イネ、タバコ、バラを対象としても行い、シロイヌナズナで得られた結果と比較した。その結果、植物種間でTATA-boxとInrの配列および位置関係などが高度に保存されていることなどが明らかとなった。そこで、シロイヌナズナを対象として、TATA-boxと転写開始点の距離、InrのYRルールおよびその周辺配列に置換等を導入したレポーター遺伝子発現系について、2019年度に立ち上げた評価実験手法を用いて、解析を行う。また、シロイヌナズナで用いた各種の変異を導入したプラスミドを、イネおよびタバコから調製したプロトプラストにも導入し、植物種の違いでどう変異の影響が異なるかを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた評価実証試験について、転写量とInr配列との関係性などの評価に関する一過性発現実験解析の一部を次年度実施分とした。それらにかかる予算を2020年度実施計画分を合わせて解析にかかる消耗品費として使用する。
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