研究課題/領域番号 |
18K05558
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
新屋 友規 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (80514207)
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研究分担者 |
小竹 敬久 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20334146)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 植物-昆虫間相互作用 / 植物免疫 / 細胞壁 / イネ / 植食性昆虫 / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
植物を食害する植食性昆虫に対して効果的に植物免疫システムを活性化するうえで、植物の食害認識は重要な系のひとつである。植物の食害認識では「昆虫由来の分子」に加え、「食害にともない産生される分子」や「自己組織の損傷」を認識すると考えられているが、報告例が限られている。本年度は、植物の昆虫認識分子機構の解明に向けて、イネとクサシロキヨトウの相互作用に注目し、食害時の細胞壁損傷にともない産生するデンジャーシグナル糖鎖分子によって誘導される防御応答の解析を初年度に引き続き行うとともに、デンジャーシグナル糖鎖産生の分子メカニズムの解析を行った。 初年度において、デンジャーシグナル糖鎖の産生に重要な細胞壁分解酵素が、食害認識に重要なクサシロキヨトウ吐き戻し液中に存在することを見出していた。本年度、この酵素が植物に由来するのか、あるいは昆虫に由来するのかを明らかにするために実験を行ったところ、クサシロキヨトウの腸内に存在する細菌が産生している可能性がみえてきた。クサシロキヨトウ腸内細菌の単離・同定および菌叢解析を行ったところ、当該酵素遺伝子を有している複数の腸内細菌が存在することが明らかになった。これらの結果より、イネを食餌したクサシロキヨトウの腸内において、腸内細菌が産生する細胞壁酵素がイネ細胞壁よりデンジャーシグナル糖鎖分子を産生し、この分子が吐き戻し液に混在することで、クサシロキヨトウ食害時のイネの害虫認識や防御応答誘導に影響することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で新たに見出した新規デンジャーシグナル糖鎖に対する応答解析をおおむね完了した。また、細胞壁から当該糖鎖の遊離メカニズムの解析として、吐き戻し液中の細胞壁分解酵素の解析や、酵素を産生する植食性昆虫の腸内細菌の解析を行い、研究目的を達成するための重要な研究結果を得た。以上のように本研究課題は研究計画に沿っておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
クサシロキヨトウ吐き戻し液中に含まれる、食害認識に関わる新規デンジャーシグナル糖鎖に注目し、デンジャーシグナル糖鎖の産生メカニズムに関して解析を継続する。また令和元年度より継続して、吐き戻し液中のデンジャーシグナル糖鎖の簡易で高感度な検出系の構築を目指す。一方で、クサシロキヨトウにとって不利となる当該糖鎖をなぜクサシロキヨトウが有しているのだろうか。何らかの形で生存戦略に利用されている可能性についても探っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費をイネの防御応答解析や、デンジャーシグナル糖鎖の産生メカニズムの解析、および吐き戻し液中の当該糖鎖の検出系構築に用いる試薬・分子生物学試薬および消耗品の購入に使用する。本研究成果の学術誌への投稿を目指し、投稿にともなう費用を手当てする。研究成果の発表および情報収集のため学会への参加するため、また研究打ち合わせを行うための旅費を手当てする。計画していた実験課題の一部を次年度に行うこととなり研究費の一部を繰り越すが、研究課題全体としはおおむね順調に進展しており、次年度も実験実施計画に従い研究を推進する。また、新型コロナウイルス感染症による問題のため、計画していた研究打ち合わせを次年度に延期した。
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