コムギ7B染色体短腕のVRN-B3座を含む領域に、Chinese Spring(CS)の持つアレルと比較して早生アレル(QHt-7B-Zen: ゼンコウジコムギ由来)と晩生アレル(QHt-7B-Ru: スペルトコムギ系統st. Rumania由来)を持つ出穂性QTLを同定した。これらのアレルを用いることで、出穂を3~4日早生化または晩生化することが可能である。本研究ではこれら2つのQTLに着目して、コムギ出穂期のFine-tuning の育種基盤を確立することを目的とする。 本年度は、2つのQTLに関する大規模分離集団各950個体を用いたマッピングを行った。QHt-7B-Ruの候補領域については、フロリゲンをコードするFT遺伝子(=VRN-B3)を含む約2.2 Mbの領域に絞り込むことができた。QHt-7B-Zenに関しては、FT遺伝子を含む約1.6 Mb内に10個の組換え体を選抜し、現在後代を用いて表現型の調査を進めている。 最近、Chinese Spring のリファレンスゲノム配列上にはFT遺伝子が3コピー存在することが報告された。そこで、QTLの原因配列がFT遺伝子のコピー数変異である可能性を検証するため、デジタルPCR法によりFT遺伝子のコピー数を調査した。その結果、QHt-7B-Zen領域にはCSと同様に3コピーのFT遺伝子が存在していたのに対して、QHt-7B-Ru領域には1コピーしか存在しないことが明らかとなった。 北海道の実用品種の遺伝背景下においてQTLの効果を検証するために、春まきコムギ品種「はるきらり」に、CS、Zen、RuおよびVrn-B3アレルを持つHOPEから7B染色体短腕領域を導入した準同質遺伝子系統(BC6)を育成できた。
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