研究課題/領域番号 |
18K05567
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
葛西 厚史 弘前大学, 農学生命科学部, 研究機関研究員 (80633982)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 接ぎ木 / エピゲノム編集 / RdDM |
研究実績の概要 |
申請者らは “接ぎ木” 栽培技法と “RNAの篩管長距離輸送性” を活用した世界初のイノベーション育種技術「接ぎ木を利用したエピゲノム編集体獲得法」を開発した。実用化に向けた技術改良として3つの課題について検討し、より実用的な技術へと昇華することを目的とした。 ① エピゲノム編集の効率化 DNAメチル化誘導への関与が知られている24 nt siRNAsを優先的に産生させるコンストラクトを構築し、siRNA供与体への導入を行った。作出した改良siRNA供与体についてsmall RNA seqを実施し、標的領域由来のsiRNAをサイズごとに分類したところ、siRNA供与体と比べ24 nt siRNAがおよそ1.5倍程度になっていることが判明した。この改良siRNA供与体を穂木とする接ぎ木を行い、より高メチル化を誘導できるか調査している。 ② 汎用的活用化 一つのsiRNA供与体を作製することで複数の品種に対してメチル化度の上昇を誘導するという汎用性について調査するにあたり、複数の栽培品種の根からの再分化が可能か調査したところ、現在までに調査した5種類の栽培品種すべてで再分化体を獲得できた。 ③ 適用植物種の拡張-リンゴへの応用- 本技術の適用植物種の拡張のため、木本植物の果樹リンゴ(Malus×domestica)への応用を試みた。外来遺伝子および葉緑体合成系などを用いたモデル実験及び実需的な形質である果実の貯蔵性に関わる内生遺伝子を標的とするsiRNA供与体の作出を進めたが、まだ獲得できていない。しかしながら、リンゴでの根からの再分化さらには培養を経ず植物体の根から「ひこばえ」を誘導する技術を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請課題において取り組んでいる3課題のうち、① エピゲノム編集の効率化及び② 汎用的活用化については、それぞれのシステムを組み込んだsiRNA供与体(遺伝子組換えジャガイモ)を複数系統作出することができたため、それぞれのsiRNA供与体についてそのsiRNAの産生能などの調査を進めることができた。現在、接ぎ木を実行し、メチル化を誘導する過程に入っているのだが、指標とするメチル化レベルの誘導に至っていない。そこで、改良siRNA供与体および恒常siRNA産生体のメチル化レベルと表現型を調査している。 ③ 適用植物種の拡張-リンゴへの応用-については、siRNA供与体(遺伝子組換え体)を獲得すべく進めてきたが、現時点でも獲得できていない。しかしながら、エピゲノム編集体を獲得するための技術開発は進めることができた。 また、3課題について研究協力者である原田竹雄弘前大学名誉教授とも適宜議論を重ね適切に研究遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
① エピゲノム編集の効率化 外来遺伝子(35S:GFP)を標的としたモデル実験系を利用し、GFP蛍光による可視的にエピゲノム編集誘導の効率化を検討する。Kasai et al. (2016)が報告した実験系と今回新たに作出したROS1遺伝子抑制コンストラクト2重siRNA供与ジャガイモ及び高24 nt siRNA産生ジャガイモを穂木として接ぎ木を行い、GFP蛍光観察ならびにメチル化度解析等様々な手法を用いて比較調査し、より効率的にGFP蛍光を抑制することができる方法を確立する。さらに、内生遺伝子を標的とするコンストラクトも導入し、内生遺伝子のエピゲノム編集系統作出効率化についても検討していく。 ② 汎用的活用化 複数の栽培品種において根から再分化体(接ぎ木体から獲得することでエピゲノム編集系統候補となる)を獲得することができた。また、それらの品種について標的とする遺伝子配列の確認も行っている。したがって、課題①の方法が確立した段階で同様に他の品種とも接ぎ木を実施する。 ③適用植物種の拡張-リンゴへの応用- エピゲノム編集系統獲得に関する技術は取得済みであるため、siRNA供与体(遺伝子組換え体)の獲得が課題となっており、分譲していただいた高形質転換効率であると報告があった台木品種での形質転換を引き続き進める。また、課題①の成果が見えてきたら、効率化するためのコンストラクトも同時に有する高効率コンストラクトの構築を進め、1度の形質転換により高効率siRNA供与体を作出できるようにする。
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