我々は形質転換シロイヌナズナを用い、Brassica rapaの根こぶ病抵抗性遺伝子座Crr1bの責任遺伝子の同定を試みている。これまでに Crr1b のORF2とRF4を集積させた個体を育成したところ、黄化・枯死する個体が複数確認されたことから、雑種個体に見られた黄化が2つのORFの集積によるものなのか検証を行った。F2では黄化を示す個体と野生型を示す個体の分離が認められたが、黄化した全ての個体においてORF2とORF4の導入が確認され、ORF2とORF4の集積により黄化表現型が誘導されることが強く示唆された。また、F1個体においては、野生型やORFを単独で有する個体と比較し顕著な細胞死と過酸化水素の蓄積が検出された。このことから、黄化表現型は過敏感反応によって生じ ている可能性が考えられた。また、F1個体を22°Cで 育成すると、14日後には全ての個体において黄化が確認され、21日後には多くの個体が枯死した。一方、28°Cで育成した個体は野生型と同様の生育を示した。高温条件下ではサリチル酸(SA)蓄積が抑制さ れるという報告があることから、黄化表現型への SA の関与が示唆された。 Crr1bのORF2とORF4を集積させた個体に根こぶ病菌を接種したところ、ORF2とORF4が集積したF1個体では、野生型と比較し根部の肥大程度が小さい個体や、根こぶの形成が認められない個体も認められたが、全ての個体は黄化症状を示したことから、生育不良によって根こぶの発達が抑制された可能性も考えられた。Crr1bのORF2とORF4をもつシロイヌナズナでは、過敏感反応が誘導されてしまい、根こぶ病抵抗性が誘導されない可能性がかんがえられた。過敏感反応を回避するために、B.rapaをドナーとした形質転換体を作出して解析する必要があると考えられた。
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