研究課題/領域番号 |
18K05569
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
久保山 勉 茨城大学, 農学部, 教授 (10260506)
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研究分担者 |
小野 道之 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50201405)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アサガオ / 日長感応製 / 光周性 / QTL / 短日 / 選択的スプライシング |
研究実績の概要 |
本課題はアサガオをモデルとして短日植物における開花の日長応答性の遺伝学的なメカニズムの解明を目指し到花日数の量的遺伝子座(QTL) qIF3候補遺伝子InCOの機能解明とqIF1のポジショナルクローニングを目指す。 平成30年度はInCOに1つあるイントロンが切り出されたmRNA(InCOα)と切り出されていないmRNA(InCOβ)の蓄積量を東京古型標準型(TKS)とアメリカアサガオ(I. hederacea) Q65系統、アサガオのアフリカ系統 (Q63)について調査した。暗期14時間後のInCOαでは短日条件で発現量が多く、長日条件で少ない傾向であったが、Q65については日長に関係無く発現量が多くなっていた。暗期8時間後では、InCOβの発現量は長日条件で多く、短日条件で少ない傾向が認められた。さらに、TKSにおいて24時間の発現を調査したところ、InCOαもInCOβも短日条件で増加する発現パターンが得られたが、InCOαは短日と長日での発現量の比がInCOβよりも大きく、長日では機能を持つタンパク質をコードするInCOαの量が極めて少ないが、短日になると蓄積が見られるようになることが示唆された。 一方、分担者の小野らはCRISPR/Cas9を用いてVioletとQ63のInCOのノックアウト変異体を作製した。しかし、Q63を弱い誘導条件下(13 h Light / 11 h Dark)で1ヵ月栽培した結果、原品種では花成を示さないのに対し、InCO変異体では花芽形成率が100%となる強い花成を示した。この結果からInCOが花成の抑制因子として機能を持つことが明らかになった。また、この結果はQTL解析においてqIF3のQ63対立遺伝子が花成を遅らせる効果を持つ結果とも一致しており、qIF3がInCOであることを支持するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
InCOの発現解析が実施できた。 InCOのゲノム編集による突然変異体の解析によって開花を抑制する因子であることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、TKSにおいてInCOαとInCOβの24時間発現を調査した.令和元年度は InCOの24時間の発現をQ65とQ63で調査し、対立遺伝子の機能と発現パターンの関係を調査する。また、InCOタンパク質に対する抗体を作製し、日長条件でInCOαタンパク質とInCOβタンパク質の発現がどう変化するかを確認する。 令和元年度はqIF1のポジショナルクローニングを行うため、qIF1からqIF4までの4つのQTLのうちqIF1のみ分離する個体をTKSxQ65 BC3F2のなかから選び、大量の種子を得て、令和2年度分離集団を展開するための準備を行う. Q63にγ線を照射し、突然変異体の誘発を行う.令和元年度は平成30年度照射した個体を栽培し、照射に適した線量の確認を行う. 一方、Violet系統において得られたInCOのゲノム編集による突然変異体を利用してInCOαのアサガオ花成への機能を調査する研究も実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に高密度連鎖解析を実施するための分離集団を作成する予定であったが、夏の高温で植物が育成できず、大量の個体を扱うことができなかったため、そのための支出が次年度となった.また、mRNAの発現解析が終了しなかったため、抗体を用いたタンパク質発現解析が実施するに至らず、その点も初年度の計画からずれて次年度の実施となった.今年度は、主としてタンパク質の発現解析と次世代シーケンサーを用いた外部委託によりDNAの分析を行い、昨年度の分まで支出する予定となっている.
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