研究実績の概要 |
本研究課題はアサガオの到花日数QTL qIF1の単離と到花日数で最も効果の高かったqIF3の候補と考えられる InCOと開花誘導にどのような関係があるのかを明らかにすることを目的として行われた。 まず,qIF1のマッピングのためにBC3F2の自殖種子のなかからqIF2とqIF3の染色体領域がTKS由来で,qIF1がTKSとQ65のヘテロ接合である個体の自殖種子132個を播種し54個体が開花した.これらの個体の到花日数を調査したところ,qIF1の領域にQ65の染色体断片を持つものが早く開花する傾向は見られたが,同じ遺伝子型でも到花日数が長くなる個体もあり,明確にqIF1の領域を絞り込むことはできなかった.また,不発芽種子が多数みられ,Q65の第5染色体にTKSの遺伝的背景では異常を引き起こす遺伝子の存在が示唆された。冬期に80Gy200個体,160Gy200個体のM1を栽培し,M1個体当たり15個体ずつM2世代で栽培した結果,野生型より1週間早く開花する個体が得られた。一方,研究分担者の小野は,ゲノム編集によってInCOのヌル変異体を品種「ムラサキ」で,co-1とco-2の2系統,アフリカ系統でco-3, co-4の2系統作出した。いずれも芽生えを用い16時間暗期の短日条件を1回与えた場合には野生型と違いがみられなかった.しかし,異なる日長を10回ずつ与えると、co-3,co-4共に野生型のアフリカ系統より限界暗期長が約1時間短くなることが判った。また,自然条件下で栽培したとき,「ムラサキ」とco-1,co-2では差がみられなかった.一方,co-3,co-4はアフリカ系統よりも早咲きとなった.そのため,InCOは長日条件では開花を抑制していると考えられた.しかし、InCOのヌル変異体でも短日性が完全に失われることはなく,InCO以外にも短日性に関与する因子の存在が推察された。
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