本年度は、総リグナン含有形質を制御する遺伝子同定について更なる解析を行った。 (1)これまでにNAC型転写因子に関して、低リグナン含有系統のアレルが総リグナン含量の低下に関与すること、複数の高リグナン含有系統は高リグナン型アレルをもつことを見出した。そこで本年度はこれらアレルの発現パターンを調査した。総リグナン含量の異なる複数の系統を育成し、リグナン蓄積の初期にあたる開花後7、14,21日目の登熟種子を採取しRT-PCRによる発現解析を行った。その結果、低リグナン含有系統では21日目において発現量の低下が認められ、このアレルがリグナン含量を低下させることが改めて示唆された。一方で高リグナン含有系統と中リグナン含有系統の間で発現パターンに顕著な差は検出されなかった。 (2) NAC型転写因子以外の総リグナン含量に影響を与える遺伝子の探索を行った。NAC型転写因子遺伝子に関して野生型のアレルを持つ、高リグナン含量と中程度のリグナン含量を示す系統の交配に由来するF2集団を作出した。この集団を用いてQTL-seq解析を行ったところ、NAC型転写因子座上領域とは異なる染色体領域が、原因遺伝子座上領域として検出された。現在はこの領域に存在する、新規総ゴマリグナン含量制御遺伝子の同定を行っている。 ゴマ近縁野生種の新規ゲノム解析 ゴマの近縁野生種が蓄積するリグナン分子種は種間で多様性に富む。これら野生種のリグナン生合成経路を解明できれば、栽培ゴマの知見と照らしあわせて、様々なゴマリグナン生合成経路の解明につながり、生合成経路の進化についても重要な知見が得られると期待される。2021年度の「先進ゲノム支援」に応募したところ採択されため、5種のゴマ近縁野生種のゲノム解析を行うことができた。今後は得られたデータをもとに、ゴマリグナン生合成系遺伝子の単離と種間での比較を行っていく。
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