研究実績の概要 |
脱粒性とは、穂から種子が脱粒する性質であり、自然界では種子の拡散による繁殖戦略として重要な性質である。一方、作物として考えた場合、強い脱粒性は収穫量の減少につながることから、今日でも重要な農業形質の1つである。これまでに、申請者らは、栽培ジャポニカイネ品種と栽培インディカイネ品種の品種間差を利用したQTL解析から、脱粒性に関与するQTLを明らかにし、qSH1遺伝子を同定し、qSH1遺伝子が種子の基部の離層形成に必須であることを明らかにしている。今年度は以下の2つの研究項目について研究を実施した。 1. イネの栽培化において脱粒性の喪失の原因となった遺伝子の解析 これまでに作出した3つの脱粒性遺伝子、qSH1,OSH15, sh4の相互作用を解析するための8種類の材料を用いて、出穂直後から1週間毎に4週間後まで脱粒性の定量的な測定を行った。また、籾の基部の切片を作成し、詳細な形態観察を行い、3つの脱粒性遺伝子qSH1,OSH15, sh4の各遺伝子の離層形成および離層崩壊への関与を調べた。 2. イネの新規脱粒性遺伝子の探索 選抜した脱粒性の突然変異系統を用いて、後代で表現型および遺伝子型の確認を行った。また、同時に野生型との交配および世代促進を行い、F2種子を得た。F2個体を栽培し、脱粒性の分離を調べた結果、表現型がおおよそ3:1に分離することが確認できた。
|