研究課題
脱粒性とは、穂から種子が脱粒する性質であり、自然界では種子の拡散による繁殖戦略として重要な性質である。一方、作物として考えた場合、強い脱粒性は収穫量の減少につながることから、今日でも重要な農業形質の1つである。これまでに、申請者らは、栽培ジャポニカイネ品種と栽培インディカイネ品種の品種間差を利用したQTL解析から、脱粒性に関与するQTLを明らかにし、qSH1遺伝子を同定し、qSH1遺伝子が種子の基部の離層形成に必須であることを明らかにしている。今年度は「イネの新規脱粒性遺伝子の探索」について研究を実施した。ガンマ線照射による変異体の中から選抜した脱粒性に関する突然変異系統を用いて、後代で表現型および遺伝子型の確認を行った。また、同時に野生型との交配および世代促進を行い、F2種子を得た。F2個体を栽培し、脱粒性の分離を調べた結果、表現型がおおよそ3:1に分離することが確認できた。そこで、F2個体のうち難脱粒性の表現系を示した個体由来のバルクDNAを作成し、次世代シーケンサー解析を用いてMutmap解析を試みた。現在、シークエンス解析データを用いて、候補遺伝子の原因変異の確認を行っているところである。候補遺伝子については、ゲノム編集を用いて、機能欠損型の変異体を作成し、非常に脱粒しやすい機能型qSH1領域を含むイネ品種日本晴背景NIL(qSH1)に導入することにより、機能の証明を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
計画していた以下の解析を遂行できているため。・イネの新規脱粒性遺伝子の探索1. ガンマ線照射による変異体の中から選抜した脱粒性に関する突然変異系統を用いて、後代で表現型および遺伝子型の確認を行った。2. 野生型との交配および世代促進を行い、F2種子を得た。F2個体を栽培し、脱粒性の分離を調べた結果、表現型がおおよそ3:1に分離することを確認した。3. F2個体のうち難脱粒性の表現系を示した個体由来のバルクDNAを作成し、次世代シーケンサー解析を用いてMutmap解析を実施した。
今後は、選抜した脱粒性の突然変異体および野生型、F2で脱粒性が分離したDNA等を用いて次世代シークエンサーによりゲノム塩基配列の解読を行い、ガンマ線照射による変異部位の特定および原因遺伝子の同定を試みる。さらに、候補遺伝子については、ゲノム編集を用いて、機能欠損型の変異体を作成し、非常に脱粒しやすい機能型qSH1領域を含むイネ品種日本晴背景NIL(qSH1)に導入することにより、機能の証明を行う予定である。
キャンペーン期間中に試薬が購入できたため、経費が抑えられたため。候補遺伝子の機能証明のためのゲノム編集実験の試薬代(プライマー合成、Taqポリメラーゼ、制限酵素、培地等)、消耗品代(PCRチューブ、1.5mlチューブ、チップ、シャーレ等)として使用予定である。
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Journal of Plant Pathology
巻: 101(4) ページ: 1211-1214