研究課題
生殖的隔離は種の同一性を維持する障壁として働くとともに、種(集団)の分化を促進する。栽培イネOryza sativaとO. glaberrimaの種間雑種において、S18遺伝子はヘテロ接合体における生殖細胞の形態異常、強度の花粉不稔および分離歪みを引き起こし、本研究にてS18ハプロタイプを構成する原因遺伝子として2遺伝子を単離した。S18ヘテロ接合体はO. glaberrimaアレルの減少型の分離ゆがみをおこすことがしられている。これまでの二年間の研究において分離ゆがみが起こる時期は減数分裂期の可能性を考えてきたが、胞子体的な花粉高不稔の割には配偶体の遺伝子型に依存的な不稔が起こる理由は明らかとなっていなかった。二つの原因遺伝子座間において組換えが起こった個体では、高不稔が起こらないが、分離ゆがみが起こる個体が得られたため、この個体の花粉成熟期における表現型の表現型を詳細に観察した。その結果、花粉開花期の成熟花粉においてヨードヨウ化カリ染色が異常となる50%の半不稔となることが明らかとなった。この結果からS18は胞子体的な不稔と配偶体的な不稔の両方が同時に起こることにより、高度の花粉不稔を形成していることが明らかとなった。また、O. glaberrimaのコアコレクション品種群のハプロタイプ解析をすすめて、S18BおよびS18Tの原因変異の候補が自然集団内にどれだけ浸透しているかを調査した。S18BおよびS18Tの原因変異をAAゲノム種アクセッションにおいて探索したところ、O. glaberrimaの祖先種であるO. barthiiにおいて起源していたことが明らかとなった。O. sativaと交雑した場合、S18はO. barthiiおよびO. glaberrimaのみで見いだされることと対応していると考えられた。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
Frontier Plant Sci.
巻: 11 ページ: 632420
10.3389/fpls.2020.632420
巻: 12 ページ: 633247
10.3389/fpls.2021.633247
J. Plant Res.
巻: 133 ページ: 525-535
10.1007/s10265-020-01189-w