研究課題/領域番号 |
18K05577
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
清水 顕史 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (40409082)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 遺伝育種学 / 植物栄養学 |
研究実績の概要 |
肥料が少なくてもイネの収量はどこまで確保できるのかを明らかにするために、滋賀県立大学の圃場実験施設にある連続で無施肥栽培している水田を利用して、穂数や粒数や穂重などの収量関連形質について、品種改良に役立つ遺伝子座の解明に取り組んでいる。2019年度は、以下の1)~3)について明らかにすることができた。 1)コシヒカリ×ユーカラの組換え自殖系統のKYu-RIL45は、連続無施肥水田でコシヒカリよりも有意に穂数が多い。原因遺伝子を明らかにするため、KYu-RIL45とコシヒカリとの交雑後代F2種子の生産および穂数調査を行い、ユーカラの持つ多穂性は染色体7の出穂関連遺伝子座として知られるGhd7を含む染色体領域で説明できることが分かった。現在、多穂性がGhd7の多面発現によるものか否かを明らかにするためにF3後代と追加のF2集団を用いた精密マッピングを進めている。 2)ジャポニカ品種KHAO NOKは、水耕液を標準の40~400倍に希釈した低栄養条件で相対的に高い成育量を示す栄養ストレス耐性に優れた品種であることが分かった。そこで日本晴とKHAO NOKのF3集団を用いたQTLseq解析を行ったところ、 低栄養ストレス耐性を説明できる新規の遺伝領域を検出することができた。KHAO NOKは日本のイネ品種に比べ有意に種子の幅や長さが大きい品種であるが、検出された栄養ストレス耐性は種子の大きさとは別の遺伝要因によることも明らかになった。この耐性遺伝子座の単離と遺伝子座間相互作用の確認を進めている。 3)日本晴の染色体断片を置換したコシヒカリ染色体断片置換系統群で、穂数や粒数の有意に増加した系統とコシヒカリとの交雑後代を用いた調査を行い、染色体1長腕に粒数の増加に寄与する遺伝子座が存在することが確認された。染色体12の置換系統で見られた穂数の増加は分離集団では確認ができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低肥料用のイネ収量増加に寄与する遺伝子座および座間相互作用の効果の確認を行うための研究である。日本イネ品種の持つ穂数の増加や粒数の増加に寄与する遺伝子座を連続無施肥水田での栽培条件で検出することができたこと、および、ジャポニカ品種遺伝資源中に低肥料耐性に関わる新規遺伝子座を検出できたため、研究は順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの遺伝解析で明らかにしたユーカラが連続無施肥水田でも示す多穂性の遺伝子座については、ファインマッピングを行い染色体7の出穂関連遺伝子座Ghd7との関係を明らかにする。具体的には多数の分離集団およびその自殖後代を用いて組換え型の探索を行う。Ghd7は出穂期だけでなく草丈や穂の大きさへの関与が報告されているが、穂数の増加への寄与は報告されていない。ユーカラの示す多穂性は、栄養ストレス条件でも有効であることを示唆するデータが得られており、遺伝子の単離を進めつつ育種利用に役立つ情報を収集する。 また、QTLseqで検出できたジャポニカ品種KHAO NOKの持つ低肥料ストレス耐性については交雑後代とDNAマーカーを用いた効果の確認を行い、こちらも遺伝子単離と育種利用に向けた遺伝解析集団の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に高速シーケンサーによる解析に関するコストを削減することができたため。
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