肥料が少なくてもイネの収量はどこまで確保できるのかを明らかにするために、滋賀県立大学の圃場実験施設にある1996年以来連続で無施肥栽培している水田を利用して、穂数や粒数や穂重などの収量関連形質について、品種改良に役立つ遺伝子座の解明に取り組んでいる。2020年度は、以下の1)~3)について明らかにすることができた。 1)コシヒカリ×ユーカラの組換え自殖系統のKYu-RIL45は、連続無施肥水田でコシヒカリよりも有意に穂数が多い。KYu-RIL45とコシヒカリとの交雑後代F2およびF3の生産および穂数調査を行い、ユーカラの持つ多穂性形質の染色体領域領域を狭めることができた。ただし、KYu-RIL45は粒数や稔実率の低下がみられることも判明した。 2) コシヒカリ×ユーカラの組換え自殖系統のKYu-RIL84は、複数年の連続無施肥水田栽培でユーカラよりも多い粒数を示すことが確認された。つまり、KYu-RIL45は持たないがKYu-RIL84は持つ低肥料下での収量増加に寄与する遺伝子座領域の存在が示唆された。 3)ジャポニカ品種KHAO NOKは、40倍に希釈した水耕栽培で相対的に高い成育量を示す低栄養ストレス耐性に優れた品種であり、日本晴×KHAO NOKのF3集団を用いたQTLseq解析を行ったところ、 低栄養ストレス耐性を説明する新規の遺伝領域を検出することができた。更に、KHAO NOKは低栄養水耕液からの養分吸収能力が高いことがわかり、QTLseq領域の解明により肥料が少ない環境で収量増加を実現するための重要な遺伝子が解明できると思われた。
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