研究実績の概要 |
植物は外界からのシグナルによって季節を判断して花を咲かせる準備をする。イネでは短日条件で地上部の葉で花成ホルモンが作られ, 地下部の茎頂で作用して 幼穂形成が促進される。先行研究ではイネにおいて栄養生長期の水温が次世代の出穂時期に影響を与えることを見いだしており, 前世の水温が低かった場合次世 代では出穂が早くなった。しかし, その分子メカニズムは未解明なままである。本研究では環境ストレスが次世代の種子に記憶されるメカニズムを明らかにする ため, 環境条件を変化させて世代を促進したイネを材料に, 表現型の分析と分子生物学的な解析を行う。 本年度は2品種(日本晴,ゆきひかり)とも水温が高い方が葉齢の進み方と出穂日がはやく, 高水温がイネの葉の展開スピード, 出穂までにかかった日数を促進すること,早生品種でその性質が強いことを確認した。出穂時の葉の枚数は低水温で約1枚少なくなる現象も再現性が確認され,水温が葉の長さに影響し, 葉の細胞の分裂と関与する可能性が高まった。 本年度は更に,相転移の研究対象にダイズとトウガラシを加えた。ダイズでは相転移が品種によってタイミングは変化するが,変化する表現型の順序は変化せずに遺伝的に制御されていることを明らかにした。さらにはリン欠乏状態でも相転移は順序を変化すること無く展開することが分かり,土壌のストレスは相転移に影響が少ないことも明らかにした。また,トウガラシでは遠縁雑種を作成した場合に生じる生殖隔離の現象と相転移の現象がクロストークしており,栄養生長期の相転移が生じるタイミングで生殖隔離の現象が派生することも明らかにした。 上述のようにイネでは相転移と温度の関係,ダイズでは相転移と会陰との関係,トウガラシでは相転移と生殖隔離との関係を明らかにすることが出来た。
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