研究実績の概要 |
もみ枯抵抗性系統RBG2-NIL(抵抗性QTL,RBG2をひとめぼれに導入した系統)は、ひとめぼれより苗腐敗に対する抵抗性程度がやや高かったものの、明確な抵抗性は示さなかった。このことからもみ枯細菌病菌(Burkhorderia.glumae)に由来する2つの病徴(苗腐敗症状およびもみ枯症状)に対する抵抗性をあわせて付与するには、複数のQTLを導入する必要があることが推測された。世界の在来品種(農研機構のジーンバンクで選定した世界コアコレクション品種を含む)および近年日本で育種された品種についてもみ枯細菌病菌によるもみ枯症状に対する抵抗性の評価を実施したところ、抵抗性品種(Kele)と同じ程度の抵抗性を示す品種が複数あることがわかった。そこで、RBG2のアリルタイプによる系統樹を作成したところ、いくつかのグループに分かれることがわかった。代表的なコアコレクション品種の染色体を遺伝背景「コシヒカリ」に導入した染色体置換系統(CSSLs)でRBG2領域がコシヒカリに導入された系統を横断的に評価した。その結果、品種AのRBG2領域をコシヒカリに導入した系統がもみ枯抵抗性を示すことが明らかになった。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための在宅勤務および交代勤務を行ったため、圃場での検定に支障が生じ、実験についても予定通り進めることが難しかった。最終年度には、RBG2の原因遺伝子に関してCRISPR/Cas9による変異体の作出のための配列確認(シークエンサー実験)およびRBG2-NILおよびひとめぼれ間での発現解析用のサンプリングを圃場および温室で実施した。今後、相補性検定、発現解析、GFPもみ枯細菌病菌の動態観察等により、RBG2のメカニズムの全容解明を目指したい。
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