研究課題/領域番号 |
18K05586
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
小林 伸哉 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, ユニット長 (70252799)
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研究分担者 |
藤田 大輔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80721274)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イネ |
研究実績の概要 |
1.イネ多収化遺伝子SPIKEの対立遺伝子の多様性の解明:熱帯の普及品種IR64を遺伝的背景として、国際稲研究所で育成された熱帯日本型品種に由来するNew Plant Type(NPT)稲5品種のSPIKEの座乗する染色体断片を導入したNIL5系統に加え、日本晴およびコシヒカリ由来の染色体断片を導入した系統も評価し、一次枝梗数は変わらないものの二次枝梗数の増加程度や三次枝梗の有無に系統による違いのあることを明らかにした。 2.異なる環境条件下で安定して多収となる系統YTH183 の遺伝的要因の解明:YTH183は、IR64を遺伝的背景としNPTを1回親として3回連続戻し交雑の後代から選抜された系統である。国外いくらかの地域や多様な栽培条件下での試験において、安定してIR64よりも多収となっていたが、国内(つくば)でも多収となることを複数年の試験から明らかにした。NPT由来の粒重増加に関わるQTL(qGW5)が、YTH183の環境安定的多収に関わる遺伝的要因のひとつと考えら、遺伝解析によりその染色体上の領域を特定するとともに、IR64背景でのNILを評価し、qGW5の効果を明らかにした。 3.多収遺伝子の他の品種への導入や集積系統育成による安定的超多収系統の開発 (1)マーカー補助選抜による、多収化遺伝子SPIKEの日本の多収品種への導入:日本の多収品種である「北陸193号」「タカナリ」「もちだわら」を遺伝的背景として、マーカー補助選抜と戻し交雑により、SPIKE遺伝子の導入を進めている。BC4の自殖後代系統の中で、原品種より収量が多かった個体をNIL候補系統とし、収量特性などを評価した。 (2)多収要因の集積系統育成:YTH183とIR64を遺伝的背景とするSPIKEのNILのほか、異なる多収要因を有すると思われる系統等を交配し、後代集団の世代を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.イネ多収化遺伝子SPIKEの対立遺伝子の多様性の解明:IR64を遺伝的背景としNPTに加え日本晴などの染色体断片を導入した系統のうち、穂の構造の異なる系統を、IR64および系統間で交配し分離集団の種子を得たが、調査は十分にできなかった。 2.異なる環境条件下で安定して多収となる系統YTH183 の遺伝的要因の解明:YTH183 の交雑後代についてSSD法によりF5系統を養成した。多収要因の一つと考えられるqGW5の解析結果をとりまとめ論文化を進めた。 3.多収遺伝子の他の品種への導入や集積系統育成による安定的超多収系統の開発:(1)マーカー補助選抜による、多収化遺伝子SPIKEの日本の多収品種への導入:日本の多収品種を遺伝的背景としSPIKEを保有するBC4の後代からNIL候補系統を育成した。(2)多収要因の集積系統育成:YTH183とNIL-SPIKEの交雑後代集団から、SPIKEをホモで保有するF3集団で選抜した表現型の優れる個体からF4系統を養成し選抜を進めた。 よって、当初の計画よりやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.イネ多収化遺伝子SPIKEの対立遺伝子の多様性の解明: NPT由来のSPIKE座を保有するNILとIR64の交雑後代集団について、穂の構造などの表現型と遺伝子型の調査を進める。 2.異なる環境条件下で安定して多収となる系統YTH183 の遺伝的要因の解明:YTH183のRILを養成し、表現型および遺伝子型を調査する。YTH183の多収要因のひとつであると考えられるqGW5についての解析結果の論文化する。 3.多収遺伝子の他の品種への導入や集積系統育成による安定的超多収系統の開発:(1)マーカー補助選抜による、多収化遺伝子SPIKEの日本の多収品種への導入:日本の多収品種を遺伝的背景としSPIKEを保有するNIL候補を育成し収量性の評価を行う。(2)多収要因の集積系統育成:YTH183とNIL-SPIKEなどの交雑後代から、YTH183の環境安定的多収要因と他の多収要因を集積した系統を育成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大による出勤制限や実験補助員の雇用制限により、水稲の栽培試験の規模を縮小せざるを得なかった。そのため、水稲育種素材の系統選抜などの試験が計画よりも遅延しており、事業達成のためには期間延長が必要となった。 また、2020年9月に参加を予定していたアジア作物学会が延期になった。これらにより、次年度まで期間を延長し、消耗品類購入や旅費に使用する予定。
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