研究課題/領域番号 |
18K05587
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
市田 裕之 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 協力研究員 (80513382)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重イオンビーム / 突然変異 / 一塩基多型 / ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
ゲノム解析に基づいて検出した一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism; SNP)および突然変異のリストに基づいて,反復配列や重複領域に座乗するマーカーを可能な限り排除して特異性の高い長鎖オリゴDNAプローブを設計するプログラムを開発した。本プログラムを用いることで,これら多型領域に特異的に結合するプローブ配列をほぼ全自動で設計することが可能となった。実際に本プログラムを用いてイネ在来品種間のSNPに対応するプローブを設計し,ゲノム配列にみられる特徴から判断して妥当な領域にプローブが設計されていることを確認した。現在,本プログラムを用いて設計したプローブ配列を実際に合成し,ターゲット濃縮が可能であるかを検証するための実証実験を進めている。 また,イネ品種「日本晴」種子に重イオンビームを照射した後代集団(M2)から見いだされた塩害水田において良好な生育を示す耐塩性変異系統の全ゲノム解析を実施した。得られたリードは超並列計算システム上に構築した変異検出パイプラインを用いてリファレンス配列(Os-Nipponbare-Reference-IRGSP-1.0)にマッピングし,異なるアルゴリズムに基づく4種類の変異検出プログラムを用いて変異体ゲノムに誘発された変異を網羅的に検出した。その結果,計509の変異(うちホモ接合:125,ヘテロ接合:386)を検出した。解析結果の一部は原著論文として公表した。来年度は,変異体と日本晴の戻し交雑F2集団を用い,これらの変異をマーカーとして利用することで耐塩性と変異領域の連鎖を検定し,耐塩性の原因となった変異を特定して耐塩性遺伝子を単離する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究項目1】で実施中の長鎖オリゴDNAライブラリを用いたSNP濃縮技術を開発においては,当初の研究計画どおりにプローブ設計プログラムの開発を完了し,その有効性を確認する実証実験に向けて順調に研究が進展している。また,本技術を応用してイネ耐塩性変異体における原因遺伝子を単離する【研究項目2】では,イネ変異体の全ゲノム解析に基づく変異検出を完了し,重イオンビーム照射によって変異体ゲノムに誘発された変異自体をマーカーとして形質マッピングを行う準備が整った。いずれも当初の研究実施計画に沿って順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に沿って進める予定である。近年,イネにおいては全ゲノム解析の普及によってM2などの分離集団から目的の表現型を示した個体を複数選んでバルク化し,変異体間で共通する変異を探索するMutMap法が多く用いられているが,本研究で提案するターゲットSNP濃縮法では変異体型を示した個体をバルク化することなく,各個体の遺伝子型をそれぞれタイピングできるという特徴を活かして,遺伝子型に基づくゲノム育種にも応用可能である点に留意して研究を進める。実際の育種現場に本法を導入する場合,各個体別にライブラリ調製を行う必要があることから,ライブラリ調製工程の簡略化と低コスト化が必須であるため,必要な技術開発をあわせて行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では多検体からのライブラリ調製を効率的かつ低コストで行うことが必須であるが,このための方法として最近報告された論文に基づいて必要なタンパク質を精製することが最善であると判断した。このため,当初の予定にはなかった備品(タンパク精製装置・GE AKTA Start)の購入が必要となったため,不足した消耗品費・人件費・謝金の一部を所属機関の基盤的経費によって措置することとした。今年度分の未執行額は,上記の変更によって新たに必要となる消耗品類の購入に充てるため,次年度への繰り越しが必要である。
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