ダイズ播種後の湿害回避はダイズ生産における重要な課題である.多くの品種において同一品種内に耐湿性種子と感受性種子が存在する.本研究では,同一品種内における登熟期のダイズ種子の耐湿性獲得要因の探求により,耐湿性種子の割合を高く採種することを目指した.本年度は,これまでにサンプリングした種子各粒について着粒位置や種子特性の測定と冠水発芽実験を行いデータを解析した.その結果の一部について学会発表を行った. 圃場の空間内において耐湿性種子の分布には偏りがあり,いくつかの要因に影響される可能性を示してきた.また同一圃場において播種期を遅らせることで耐湿性種子の割合が上昇した.これらの結果から,7月播種と採種位置の限定,適切な粒重の選別により種子耐湿性の高い種子を生産できる可能性が示された.しかし課題も残った.今回用いた種子は好適条件での発芽率がほぼ100%であった.冠水発芽実験による発芽率は,粒重や着粒位置で要因を限定しても最大で90%程度であり,まだなお10%の低下要因については特定できなかった.可能性のある環境要因としては,群落葉密度・分布による粒重が増加しない程度の群落内光量の増加,降水量,気温が考えられた.7月播種により種子耐湿性が高くなったこと,着莢位置により種子耐湿性が異なったことから,高次花房や亜枝など開花期の遅い莢の割合が影響している可能性も考えられた.今後これらの要因についてさらに研究を進めていく予定である.以上の結果の一部については学会発表を行った.論文化に関しても順次進める予定である.
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