研究課題/領域番号 |
18K05592
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上妻 馨梨 東北大学, 生命科学研究科, JSPS特別研究員(RPD) (70704899)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光合成 / 分光反射 / 熱放散 / 環境応答 |
研究実績の概要 |
温室効果ガス増加に起因した気候変化による地球の温度上昇が問題視されがちであるが、農業現場においてはコンスタントな温度上昇よりも近年多発している一過的な高温・低温や干ばつの頻度の増加などの「極端現象」が食糧生産により深刻な影響を与えている。そのため、変動する気象環境下において、植物のストレス状態を瞬時に検知し、それぞれの問題に対処する必要がある。しかし、現存する手法では、これらをリアルタイムに検出できない。そこで申請者は反射分光指数(PRI)を用いて、植物の余剰光エネルギーを可視化することで、植物が受ける環境ストレスをハイスループット検出する新規の測定法の開発を試みた。本研究では、1)人工気象器レベルで植物にストレスを与えた時のPRIと実際の光合成応答との相関をみる、2)ハイパースペクトルカメラを用いてPRIを測定することで、圃場レベルにおける植物ストレス応答を広範囲で一括解析する、3)人工衛星画像からPRIを抽出し、地球レベルでの植物ストレス応答を観測する、という3つの大きな枠組みで研究を行っている。本年度においては、人工気象器レベル、および圃場レベルにおいて、野生スイカとトウモロコシに乾燥ストレスを与え、ストレス応答とPRIの相関を観察した。また、カメラを用いてPRIを観測し、ストレス情報を可視化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は人工気象器レベルで植物ストレス応答とPRI応答を追跡しつつ、圃場実験のセットアップを行う予定であった。2018年夏季の猛暑の影響で植物へのストレス付与が想定していたよりも容易に行えたことから、PRIを用いて植物ストレスを検知することができた。そこで、冬季は沖縄に農場を準備し、広範囲をターゲットとしたストレス実験を行った。ハイパースペクトルカメラを用いて、農場レベルで植物ストレス応答を可視化することができた。フィールド実験は夏季に4回に分けて行う予定であったが、初年度で大方のデータを取得することができたことから、計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は強光乾燥ストレスに焦点をあてPRIの測定を行ったが、低温や病害などその他の環境ストレスにどの程度有効であるか検証していきたい。初年度は乾燥に耐性を持つ、野生スイカとトウモロコシを用いたが、稲作が主流の日本の農業では乾燥による問題は比較的少ない。低温障害などのより日本の農業分野で必要性の高い環境ストレスを取り上げ、PRIの有効性を検証する。 また、本研究課題は衛星画像を用いた地球レベルでの植物ストレス評価も行う。NASAの地球観測衛星TerraとAquaが搭載する光学センサーMODISには36種の波長帯が存在し、その内、Band11がPRIの波長に相当する526-536nmを観測している。NASAの公開データベースから目的の画像を探索し、使用可能なフォーマットに変換するプロトコルを確立する。実際には、トウモロコシ畑をターゲットに衛星データを用いて平均的な気象環境の年、熱波や干ばつが深刻だった年の同じ栽培地におけるPRIを抽出し、気象変動とPRIの変化を観察する。
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