研究課題/領域番号 |
18K05593
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研究機関 | 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター |
研究代表者 |
佐々木 和浩 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 任期付研究員 (70513688)
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研究分担者 |
郭 威 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (70745455)
板谷 恭兵 富山県農林水産総合技術センター, 富山県農林水産総合技術センター農業研究所, 研究員 (90730763)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ハイスループットフェノタイピング / 水稲栽培 / 画像解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、ハイスループットフェノタイピング技術により簡便かつ非破壊的に水稲の生育を評価し、栽培管理方針を導き出す手法を開発する。近年では、画像解析を中心としたフェノタイピング技術開発が目覚ましい。東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構国際フィールドフェノミクス拠点では、画像データから植物の生育状況を数値化する技術開発が進められてきた。例えば、麦や水稲を真上から撮影した画像データから、植被率を算出するフリーソフトウェアEasyPCCが開発されている。さらに、無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle; UAV)で撮影したソルガムの平面画像を重ね合わせることで植物体を立体構築し、驚くべき精度で草丈を推定する技術開発にも成功している。 UAVの品質向上と価格低下により、農業従事者でも利用可能な環境である。UAV は、低コストで購入できる、オペレーションの汎用性が高い、広範囲を短時間かつ高解像度でセンシングできる、などの利点がある。また、非破壊かつ経時的に同じ個体や群落の計測を行える点も、UAV を利用する大きな利点と言える。 しかし、農業現場や農業試験場へのフェノタイピング技術の導入は進んでおらず、研究開発とのギャップがある。今後、現場では、さらに規模拡大が進むと予想され、施肥や水管理などの栽培方針を決定するための、簡便かつ非破壊的に取得できる観測データが必要になってくる。①ハイスループットフェノタイピング技術は農業試験場で行っている生育量の評価法を代替できるのか?という問いを設定した。加えて、②生育量の評価法以外への応用は考えられるのか?を第2の課題とした。 本研究は、最新フェノタイピング技術を利用し、現実的に運用可能な水稲生育評価手法の開発を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
富山県農林水産総合技術センターで生育状況を判断する水稲作況試験区において、コシヒカリ、富富富(富山県育成中生品種)およびやまだわら(晩生)を慣行栽培した。移植後から幼穂形成期までに5-6回の頻度で、草丈、茎数、葉色を測定する。幼穂形成期、出穂期、成熟期も同様に行った。生育調査の前日にUAVでの空撮から水稲作況試験区の画像データを取得した。また、スペクトルカメラも搭載し、同試験区のNDVIも取得した。画像解析では、植被率を評価するソフトであるEasyPCCをより操作性の良い仕様へバージョンアップした。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度に取得した植物画像をもとに、植被率やNDVI値を算出する、さらに、生育量との関係を明らかにしていく。前年度と同様の試験を行い、空撮水稲画像データから生育状況を評価し生育量を算出する。実測値からの生育量と照らし合わせ精度を評価する。複数年度のデータを用いることで、精度を上げられる可能性があるので、31年度のデータを含め、再度変換係数を検討する。除草剤の影響試験の評価も開始する。対照区と除草剤の濃度と散布のタイミングが異なる区を設定する。水稲作況試験区と同様のタイミングで、UAVによる空撮を行い、画像データから草丈と植被率、スペクトルカメラでNDVIを算出する。経時的に得られた草丈、植被率およびNDVIから、対照区と処理区を比較することで、障害が起きている時期や障害から回復する時期を特定する。また、この試験区は、プロットが小さく生育途中の実測値調査は不可能であるため、最終的な収量調査のみを行う。経時的に得られた観測データからどの時期のどの形質が収量と関連があるかを回帰または重回帰分析により明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度想定していたその他(役務費)が、所内の支援によって低く抑えられた。今後は、より簡便な画像データの取得を目指し、UAVの保守点検、改良に当てていく。また、画像解析を進めるにあたり、技術補助員を雇用するために人件費を執行していく。
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