研究課題
熱帯アジアを中心に世界で生産されるコメの約8割を占めるインディカ型栽培イネは、稔実種子が脱粒しやすいことから収穫時や運搬時に収量ロスが生じている。このため、脱粒に要する強度を人為的に調節することができれば増収が期待できる。しかし、栽培イネの非脱粒性は複数の遺伝子座の変異によって制御される量的形質であることがこれまでに明らかとなっており、既知の変異では生産地の収穫方法に対応した脱粒強度に調節することが難しい。本研究では、完全脱粒性を持つ野生イネ(Oryza rufipogon W630)と栽培イネ2品種(O. sativa日本晴・ジャポニカとIR36・インディカ)との交雑分離集団を活用することで、各栽培イネが有する脱粒性を低下させる特異的な自然変異を同定し、既知の遺伝子座との相互作用を解明するための実験系の構築を進めた。日本晴(ジャポニカ栽培イネ)の非脱粒性に関与した遺伝子座については、遺伝背景を日本晴に統一することで形質の分離を新規遺伝子座に限定した分離集団を構築した。この集団を用いて候補領域における組み換え個体を選抜した。今後、後代検定によって原因遺伝子の座乗領域の推定を行う。一方で、IR36(インディカ栽培イネ)の非脱粒性に関与した遺伝子座については、種子脱粒性への相互効果について遺伝的な検証を行った。さらに、候補領域内の組換え個体の選抜を進め、これらの組換位置の詳細を明らかにするため、領域内に新たなDNAマーカーを作出した。また、日本晴(ジャポニカ栽培イネ)とIR36(インディカ栽培イネ)の非脱粒性に共通して関与する新規遺伝子座qSH3の原因変異とイネ栽培化との関連をまとめ、学術雑誌に投稿を行った。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 119 ページ: e2121692119
10.1073/pnas.2121692119