PCR分析により野生イネOryza rufipogon 39系統中38系統が浮稲性遺伝子SNORKELs (SKs) 遺伝子を持ち,その中の18系統が冠水耐性遺伝子SUB1A遺伝子を併せ持つ可能性が示唆されていた。そこでこれらのいくつかの系統を用いて,各遺伝子の配列調査を行った。調査した系統の中で両遺伝子を持つことが示唆されていたW0120,W1685,W1666,W1852の4系統のSK1アミノ酸配列はO. sativaのSK1と92.2-93.0%の相同性であり,SK2ではO. sativaのSK2と93.9--100%の相同性であった。また,W0120とW1685はO. sativaと同一配列のSUB1A-1を,W1666とW1852はO. sativaと同一配列のSUB1A-2をそれぞれ持つことが明らかとなった。以上の結果から,今回調査した9系統のうち,4系統がO. sativaと相同性の高いSKs遺伝子を持つこと,そのなかでW0120とW1685はSUB1A-1を併せ持ち,W1666とW1852はSUB1A-2を併せ持つことが明らかとなった。 次に,上記の系統の浮稲性評価を行った。72日齢植物体に深水処理を行った結果,W0120,W1666,W1852,W0107,W1866,W2003の6系統は深水下での節間伸長が認められ浮稲性を持つことがわかった。さらに,W0120,W1852,W0107,W1866,W2003の5系統を用いて冠水耐性の評価を行った。14日齢植物体に14日間冠水処理を行った結果,SUB1A-1を持つW0120のみが高い生存率を示した。 これらのことからSKs遺伝子とSUB1A-1遺伝子を併せ持つ野生イネ系統W0120は,浮稲性と冠水耐性の両方の形質を有することが考えられる。
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