研究課題/領域番号 |
18K05598
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
斉藤 和幸 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00215534)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イネ / ヒストン脱アセチル化酵素 / Rubisco遺伝子 / 低窒素条件 / 転写制御 |
研究実績の概要 |
ユビキチンプロモーターによるOsHDA713の過剰発現体、CaMV35SプロモーターによるOsHDA713の過剰発現体およびRNAiによるOsHDA713の発現抑制体を作出した。黒粒培土で栽培したOsHDA713過剰発現体および発現抑制体についてOsHDA713の発現量とOsRBCS3の発現量との間に有意な相関関係は見られず、OsHDA713によるOsRBCS3の発現制御は認められなかった。この時、ヒストンアセチル化酵素遺伝子GCN5の発現量を検討したところ、GCN5の発現量とOsRBCS3の発現量との間に有意な正の相関関係が見られたが、OsHDA713とGCN5の発現量の間に有意な相関関係は見られなかった。これらの結果は高窒素条件下ではOsRBCS3の発現はGCN5により制御されていることを示唆している。窒素レベルを低下させるとGCN5の発現量が減少し、OsHDA713の発現量が増加するため、低窒素条件下ではOsHDA713の役割が大きくなることが考えられる。そこで、無窒素水耕液で栽培したOsHDA713発現抑制体についてOsHDA713の発現量とOsRBCS3の発現量を検討したところ、有意な正の相関関係が見られた。この時、GCN5の発現量とOsRBCS3の発現量との間に有意な相関関係は認められなかった。これらの結果は、低窒素条件下ではOsRBCS3の発現はOsHDA713により制御されていることを示唆している。また、OsHDA713は遺伝子の転写を抑制すると考えられることから、OsRBCS3の発現を抑制している因子を抑制することによりOsRBCS3の発現を促進すると考えられる。 以上の結果より、高窒素条件下ではOsRBCS3の発現はGCN5により制御されているが、低窒素条件になるとOsHDA713の発現量が増加し、OsRBCS3の発現を制御することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の通り、低窒素条件におけるRubisco遺伝子の発現を制御しているヒストン脱アセチル化酵素はOsHDA713であることが示せたため。
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今後の研究の推進方策 |
OsHDA713は、OsRBCS3遺伝子の発現を抑制している因子を抑制することによりOsRBCS3遺伝子の発現を促進すると考えられるため、本年度はOsRBCS3遺伝子の発現を抑制している因子を明らかにすることを目的とする。OsRBCS3遺伝子の発現を抑制している因子の条件として、1. 窒素レベルを低下させるとmRNA量が増加する、2. 低窒素条件下でOsHDA713遺伝子の発現量を減少させるとmRNA量が増加する、3. 低窒素条件下あるいは高窒素条件下でOsHDA713遺伝子の発現量を増加させるとmRNA量が減少することが挙げられる。野生型イネ、OsHDA713遺伝子の発現抑制体およびOsHDA713遺伝子の過剰発現体のmRNA量をRNA-seqを用いて比較し、これらの条件を満たす因子を明らかにする。次に、OsHDA713遺伝子の発現量の増加あるいはOsHDA713遺伝子の発現量の減少がOsRBCS3遺伝子の発現を抑制している候補因子遺伝子のクロマチン構造、ヒストンH3テールのアセチル化レベル、転写活性に及ぼす影響を検討し、OsHDA713が制御しているOsRBCS3遺伝子の発現抑制因子を明らかにする。さらに、OsHDA713遺伝子の発現抑制体およびOsHDA713遺伝子の過剰発現体について低窒素条件下における光合成速度を野生型イネと比較し、OsHDA713遺伝子の発現量の変化が光合成能力に及ぼす影響を明らかにする。
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