研究実績の概要 |
キビ(Panicum miliaceum), コルネ(Brachiaria ramosa), ヒエ(Echinochloa utilis ), サマイ(Panicum sumatrense), シコクビエ(Eleusine coracana )を水耕栽培し,播種後21~30日目に, 通気を停止する低酸素区と通気を続ける対照区を設け, 約2週間栽培した. 処理前後の植物体を採取し, 乾燥後に重量を測定して個体成長速度(Plant Growth Rate; PGR)を算出した. 処理終了時に冠根を採取し, 根端から10mmごとに横断切片を作成して通気組織, リグニンおよびスベリンの観察を行った. 対照区の溶存酸素濃度は,飽和溶存酸素濃度の40%以上であった.低酸素区の溶存酸素濃度は飽和溶存酸素濃度の0%に著しく減少し,栽培期間中の最大値は20%であった.コルネの低酸素区のPGRは通気区の57%に低下したことから,コルネは低酸素環境には弱いと考えられた.そのほかの雑穀ではPGRは低下しなかった.冠根の基部では,すべての雑穀でリグニンの蓄積が確認できた。コルネの根端から100mm,キビの根端から60mm,サマイの根端から30mmと60mmではスベリンの蓄積が確認できたが,処理間での蓄積の違いは見られなかった.根端から10mmと60mmおよび基部から10mmの冠根の通気組織を観察した.キビやコルネの根端10mmとシコクビエの根端30mmの低酸素区で通気組織が見られたが,対照区では見られなかった.一方サマイは処理に関わらず通気組織の発達はみられなかった。ヒエでは処理に関わらず,根端60mmで通気組織が観察された.以上のことから,コルネが低酸素ストレスに弱いのは,通気組織が発達しなかったことが主な要因であると考えられた.
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