これまで木部液で地上に輸送されるサイトカイニン量が多くなるとダイズの莢先熟の発生が著しくなることが明らかにされている。一方で生育後期の気温が高くなると木部液で輸送されるサイトカイニン量が多くなることも明らかにされている。そこで今年度は生育後期の環境条件と莢先熟の発生の関係を明らかにした。はじめに過去数年間に渡り富山県と千葉県の気象条件を調べたところ、いずれもダイズの開花期から子実肥大期及び成熟期に至る時期に気温が高いと莢先熟の発生が著しいことが認められた。これらのことから、実際の現場においても生育後期の気温が高くなると莢先熟の発生が著しくなると考えられた。 関東南部ではダイズの莢先熟の発生を抑えるために7月に播種することが奨励されているが栽培年によっては7月播種でも莢先熟の発生が著しい栽培年がある。そこで、2013年から2020年の7月に圃場で栽培されたダイズの莢先熟発生状況と気象条件の関係を調査した。その結果、気温と莢先熟の発生程度の関係を調査したところ、開花期から子実肥大期までの平均気温と成熟整合性程度の間にはエンレイ、タチナガハ共に相関関係が認められ、この期間の平均気温が高いほど莢先熟の発生が促進される傾向にあった。これまでの研究で子実肥大期の気温が高いと地下部から地上部に輸送されるサイトカイニン量が多くなり、それによって地上部の老化進行が抑制され、莢先熟の発生が促進されると考えられている。このようなことから開花期から子実肥大期の気温が高い栽培年では生育後期に地上部に輸送されるサイトカイニン量が多くなり、それによって莢先熟の発生が促進されると考えられた。
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