イネの耐塩性品種であるPokkaliと塩感受性品種の日本晴を用い、3週間水耕栽培した。その後、100 mMのNaCl処理を4日間処理し、最上位最大展開葉の中央部を切り出して電顕固定を行った。500枚程度の連続切片を作製し、葉肉細胞の全体像を撮影した。葉緑体 (Chl)、ミトコンドリア (Mit)、ペルオキシソーム (Per)をトレースし、立体像を構築した。 それぞれの品種において、オルガネラ間の膜接触面積を定量したところ、塩処理によってChlとMit、ChlとPer、MitとPerいずれの間でも対照区と比較して膜接触面積は増加していた。これまで、2次元のTEM像による定性的な解釈から、塩ストレス下でオルガネラ間の膜接触が増加することが言われていたが、3次元解析による定量でも同様の結果となった。しかし、当初の予想と反して品種間で差は無く、耐塩性の有無にかかわらず、膜接触面積は増加していた。 膜接触面積には差が無かったが、Pokkaliと日本晴の塩処理区において、Mitの形と大きさに品種間差があった。塩処理区におけるPokkaliのMitは、体積と表面積が有意に増加し、大きく伸び広がった形状をしていた。その伸び広がった1つのMitが、平均で2.1個のPerと接触し、平均2.5個のChlと接触していた。一方、塩処理をした日本晴では、Mitの数は有意に増加したが、小型の球形のMitが増加していた。そのため、1つのMitが接触するChlとPerの数は、それぞれ1.8と1.2であった。このように、Pokkaliでは、1つのMitが大きくなり、そのMitが接触するChlやPerの数が有意に増加していた。 これらの結果から、耐塩性を発揮するためには、オルガネラ間の膜接触面積の増大だけではなく、Mitの形状や、MitがChlやPerと接触する個数が重要であることが示唆された。
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