研究課題/領域番号 |
18K05611
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
井上 栄一 茨城大学, 農学部, 教授 (90292482)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 果面コルク / サビ形成 / ゴールドファーム / 枝変わり品種 / RNA-seq / トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
リンゴにおいて果面のサビは,光沢や色彩のある果面の外観品質を損なうことから,劣悪形質とされており,その制御が課題となっている.しかし現在までにサビ形成を制御する原因遺伝子は明らかになっていない.そこで本研究ではリンゴ‘ふじ’の枝変わりにより果皮が銹褐色となった品種‘ゴールドファーム’を材料として,リンゴの公開ゲノム情報を利用して果実のトランスクリプトーム解析を行い,サビの原因遺伝子の推定を目指している. 昨年度までにリンゴ‘ふじ’および‘ゴールドファーム’のゲノムDNAを抽出し,ニホンナシ由来のSSRマーカー13種類を用いて,原品種と枝変わり品種の関係とされている両品種の同一性を再確認した.さらに両品種の果実を開花後1週目から経時的に採取し,RNA-seqおよびトランスクリプトーム解析に用いるための材料として貯蔵した. 本年度は上記の果実を用いてRNA-seq実験を行った.発育ステージとしては,これまでの結果から原品種である‘ふじ’と比較して果皮の構造に違いが生じる開花40日後までとその前後1週間に焦点を当てた.その時期の果実試料について,表皮組織から全RNAを抽出しRNA-seqに供試した.参照配列として最新のリンゴゲノム配列(GDDH13 Version 1.1)を用いてアッセンブルされた全塩基配列データとアラインメントされた各品種の塩基配列データを用いてトランスクリプトーム解析を行い,‘ゴールドファーム’と‘ふじ’の間で差時的発現を示す遺伝子を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はRNA-seqに必要なRNAの品質と収量を得ることができなかったが,本年度は,昨年度に貯蔵しておいた果実を用いて十分量の良質な全RNAを抽出できた.昨年度はRNA抽出作業に難航したが,本年度は習熟した研究員を雇用し手法を最適化することで改善された.RNA-seqには両品種の間で果皮の構造に違いが生じる時期の果実表皮組織の全RNAを供試した.さらに取得した配列データを用いてトランスクリプトーム解析を行った.次いで,KEGG pathway解析によるサビ果発生に関わるタンパク質の推定,GO onthology解析による差時的発現遺伝子の分類,Blast解析および Swiss-Prot解析による機能推定の結果を総合して,29の原因候補遺伝子を選抜した.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,‘ゴールドファーム’と‘ふじ’の間で差時的発現を示しサビ果発生との関連が示唆される29遺伝子のうち,候補遺伝子とした9遺伝子について,qRT-PCR法により両品種の果実発育過程における発現の変動をより詳細に比較し,原因遺伝子を明らかにする予定である.さらに,取りまとめに向けて関連学会において報告し,同分野の研究者からのコメントを収集する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りに執行したが、年度末時点で総支出額が未確定だった人件費の総額が確定した結果,一部残額が生じた.残額については最終年度である翌年度分の助成金と合わせて、原因遺伝子のqRT-PCRを実施するための物品費として使用する.
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