研究課題/領域番号 |
18K05614
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
三吉 一光 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (60312237)
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研究分担者 |
出口 亜由美 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 特任助教 (20780563)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 環境応答 / 日長 / 花卉 |
研究実績の概要 |
近年切り花として生産が急増しているダリアの花は,多数の小花が集合した頭状花序である。小花には舌状花と管状花の2つの形態が存在するが,観賞価値があるのは前者に限定されている。一方,秋の短日条件下では,舌状花に代わり花序の中心部に管状花がしばしば出現し,“露芯花”と呼ばれ商品価値を下げている。このため,生産者は電照により長日条件を保ち,露芯花の発生を抑制してきた。 一方,近年新しく市場に登場したダリア品種‘彩雪’の一部の株では,長日条件下でも管状花の発生が抑制できない,いわばこれまでに無い“新露芯花”タイプの変異株が見いだされた。報告者はすでに,従来タイプの露芯花と新露芯花を対象に,舌状花と管状花の形態形成に関連して,CYC2cとCYC2dの発現が大きく関与していることを見出した。 2019年度は,CYC2cとCYC2dのさらに上流の日長感応遺伝子に着目して遺伝子の探索に取り組んだ。RNAseqの結果,正常と新露芯の間に差の見られた4つの日長感応遺伝子,すなわちLHY,LHYi1i3,LHC,LHC2(LHYi1i3,LHC2の正式なホモログ名は不明だが,便宜上RNAseqの結果の表記を使用)の発現について調査を行った。. 茎の最上部,すなわち蕾,萼,最上位葉を対象に,各部位・ステージにおける日長感応遺伝子の調査を行った。その結果,LHY,LHC2, LHYi1i3に着目して正常株と進路新株で発現を精査したが,露芯に関する優位な相関は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
管状花と舌状花の形態形成に関連している遺伝子については,その候補遺伝子を明らかにすることが出来ている。一方,地上部,すなわち,茎の最上部,すなわち蕾,萼,最上位葉を対象に,各部位・ステージごとの日長感応遺伝子であるLHY,LHC2, LHYi1i3に着目して精査したが,露芯現象と無関係であることが判明した。最近,球根植物では地下部でも,日長反応に関連した遺伝子の発現の消長が存在することが明らかにされており,球根植物であるダリアにおいても,その可能性を検証する必要があると考える。従来,地上部ばかりが露芯の発現の場であるとの先入観があったが,新知見に基づいた新たな研究の展開を計画出来たという点から,手詰まりではないという意味ではおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
従来の花芽形成に関連した遺伝子の発現は葉において認められたため,2019年度の実験では,茎の最上部を対象に関連候補の遺伝子群の発現を詳細に調査したが,露芯の関連した遺伝子を見出せなかった。一方,球根植物では,花芽形成に関する遺伝子の発現の消長が地下部で観察されるとした報告がある。このため,球根植物であるダリアにおいても地下部における日長感応遺伝子の発現により露芯が制御されていると作業仮説をたてた。 次年度は,地下部を対象に,ステージ別ならびに日長環境別にサンプリングを行い,前年度に着目した遺伝子群に関連して発現の消長を明らかにし,露芯現象を制御する遺伝子を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
夏の高温時における,生育の遅延に起因した実験の遅れにより,一部の経費が執行出来なかった。
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