研究実績の概要 |
本研究では、国内で収集されたカンキツ品種、系統のゲノムワイド多型から親子関係を推定し、栽培化と多様性拡大の過程を理解して育種等に活用することを目的とする。 小課題1ではこれまでに収集したのべ1,224点のカンキツ在来品種・遺伝資源の高精度SSRマーカー分析とオルガネラ遺伝子型解析の解析から、既知のクネンボ-Bやケラジ、シイクワシャ等の異名同品種を南西諸島収集遺伝資源に複数見出すとともに、シイクワシャでは遺伝的に異なる複数の系統を見出し、栽培化と多様性拡大過程の詳細な理解が可能となった。 小課題2ではCOVID-19で昨年度延期したカンキツ遺伝資源調査を完了し、宮崎県でタチバナを中心に93点、山口県でナツミカン原木1点と変異系統30点と複数の各地の在来カンキツ遺伝資源を収集した。宮崎県の収集タチバナ等の解析から公表済の3系統と未公表の1系統以外の新規系統を11点見出し、極めて多様性に富むことが示された。また一部系統を国内の複数地点でも見出し、国内の伝搬過程を推測した。ヒュウガナツの片親候補はこれまでの調査で特定できなかったが、ヒュウガナツと同じ細胞質を持つものを国内外の収集遺伝資源に複数見出し、不明の片親品種がかつて広い地域に分布していたことが示唆された。ナツミカンの解析では解析対象がすべてクローンであることを確認し、さらにこれ以外の国内収集カンキツ遺伝資源の解析から、複数の品種で親子関係を推定した。 小課題3ではブンタン31品種と主要なタチバナ3系統を含むカンキツ162品種のNGSデータを収集、解析してSNPおよびINDEL多型を収集した。前年度までにGRAS-Diで選抜した在来カンキツ品種の多型を両親既知のトリオ品種間で比較し、ゲノム領域の親子間の伝達様式を推定するとともに、ゲノムワイド多型を用いて高密度化を図ることで当初計画を達成した。なお、開発した遺伝解析ツールに関する論文を投稿し、受理されて2021年度中に公開予定である。
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