研究課題/領域番号 |
18K05637
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
松本 光 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (20355407)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ウンシュウミカン / 香り / 植物ホルモン / ジメチルスルフィド / カンキツ |
研究実績の概要 |
ウンシュウミカンは貯蔵中に新鮮な香りが減少し異臭を生じやすい。これまでに、栽培時にGAとPDJを混合処理すると、貯蔵中に新鮮な香りが保たれ、異臭も発生しにくいが、香り成分に及ぼす影響は未解明だった。本研究では、この処理が有する2種類の香りの品質保持効果(貯蔵臭の抑制、新鮮な香りの維持)に着目し、GAとPDJのどちらの薬剤が有効かを確 認するとともに、植物ホルモンが香り成分代謝に及ぼす影響を明らかにする。 昨年度までに、GA単剤およびGAとPDJを混用処理すると、香りの品質保持効果(貯蔵臭の抑制、新鮮な香りの維持)がみられたが、PDJ単剤では効果がないことを食味評価で確認した。果肉中の香気成分を分析した結果、処理果実ではテルペン等の香気成分総含量が無処理に比べてやや高い傾向があったものの、含量差は小さかった。そこで本年度は、ウンシュウミカンの加熱臭や異臭に寄与すると報告されているジメチルスルフィド(DMS)に着目し、DMS含量に及ぼす処理の影響を調査した。「興津早生」と「青島温州」を用いて9月に混用散布処理を行い、成熟期果実のDMS含量(果肉中)をGC-MSにより測定した。さらにDMSの前駆体であるS-メチルメチオニンおよびメチオニン含量に及ぼす影響を調査した。その結果、果肉のDMS含量は処理により明確に減少し、処理果実のDMS含量は無処理果実の1/3から1/17だった。DMSの前駆体であるS-メチルメチオニンおよびメチオニン含量に及ぼす影響は小さかった。これらの処理は、果実の着色を1~2週間、遅らせたが、着色遅延とDMS含量の減少とは関連しなかった。DMSは強いにおいを有し、少量でも果実の風味に影響することが知られている。以上の結果から、GAとPDJの混用処理はウンシュウミカン果肉におけるDMS集積を抑制することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、植物ホルモン処理が成熟期果実中のDMS含量とその前駆体(アミノ酸等)に及ぼす影響を明らかにしており、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
香りの維持効果が確認された貯蔵果実について、DMSやその他の香気成分およびその前駆体(アミノ酸等) の含量に及ぼす影響を解析し、植物ホルモンが香気成分代謝に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析機器が故障し、予定していた成分分析に遅延が生じたため、次年度使用の費用が発生した。現在、果実サンプルの成分分析を再開しており、費用は次年度に使用予定である。
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