研究課題/領域番号 |
18K05643
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
入枝 泰樹 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (00749244)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 植物-微生物間相互作用 |
研究実績の概要 |
2019年度は、病原微生物の付着器侵入に対する免疫応答に植物の表皮葉緑体が関与することを明らかにした。付着器に依存しない糖誘導型菌糸先端侵入に対するシロイヌナズナの非宿主抵抗性因子として報告されているEDR1とPEN2のうち、PEN2が付着器侵入抵抗性に関与することを見出していた。pen2変異体は不適応型菌接種後に複数の免疫関連遺伝子の発現上昇を示し、edr1 pen2変異体ではこれら免疫関連遺伝子の発現上昇の低下と侵入抵抗性の低下が認められた。これらの結果は、PEN2関連免疫が付着器侵入に対してより上層で機能すること、およびEDR1もその下層で付着器侵入抵抗性に関与することを示唆している。不適応型炭疽病菌に応答してシロイヌナズナの表皮葉緑体が表層に出現する現象(表皮葉緑体応答)についても、PEN2免疫の下層で機能し、葉肉細胞葉緑体の光定位運動制御因子CHUP1により負の制御を受け、付着器侵入抵抗性に関与することをすでに明らかにしていた。今回、光定位運動の他の制御因子JAC1が表皮葉緑体応答の正の制御を促進することを新たに見出したことから、表皮葉緑体応答は葉肉細胞葉緑体の光定位運動と共通の因子に制御されることが明らかとなった。表皮葉緑体応答の誘導には炭疽病菌の付着器を介した貫穿糸形成が必須であることを見出していたため、貫穿糸突出孔に集積するエフェクターの蛍光レポーター株を用いて炭疽病菌の細胞外分泌活性と本応答の関係を解析した。その結果、pen2変異体上では貫穿糸突出孔へのエフェクター集積が野生型植物より強いことが明らかとなり、炭疽病菌の細胞外分泌活性低下株は貫穿糸突出孔におけるエフェクター集積の低下とともに表皮葉緑体応答の誘導能低下を示した。この結果より、炭疽病菌の貫穿糸分泌物に応答して表皮葉緑体が応答する可能性が考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表皮葉緑体応答に関与する植物因子の同定に成功しており、さらに植物免疫への関与も明らかにした。また、表皮葉緑体応答を誘導する微生物シグナルについても順調に絞り込めているため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。2019年度中に本研究内容を学術論文として発表する予定であったが、追加データが多く取得されたために論文執筆は2020年度に見送った。論文化が当初より遅れたことを勘案しても研究は順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
表皮葉緑体応答の発見とメカニズムおよび植物免疫への関与について、これまでのデータを整理を行いながら不足データを取得し、論文を作成・発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度中に論文を執筆して発表する予定であったため、英文校閲および論文掲載の費用を予算に組み込んでいた。しかし、追加データの取得等により論文化が遅れたため、2020年度内の発表に向けて現在論文を執筆中である。2019年度内の執行を予定していた英文校閲および論文掲載の予算は繰り越して2020年度に執行する。
|