研究課題
活性酸素種(ROS)の主要な産生酵素として,細胞膜 NADPH オキシダーゼや細胞外ペルオキシダーゼがよく知られているが,MAMP 誘導性の ROS バーストにおけるそれらの貢献度や相互作用などについては依然不明の部分が多い。本研究では,シロイヌナズナの細胞壁ペルオキシダーゼ PRX34 について,挿入位置が異なる 3 種の T-DNA 挿入系統からヌル変異体 prx34-3 を選抜し,それらの病原細菌や糸状菌由来の MAMP に対する応答について解析した。その結果,いずれも MAMP に対しても初発の ROS 生成は野生型植物と比べて~80% 低下し,残存する生成は DPI 感受性であった。以上から,MAMP 誘導性の ROS バーストにおいて細胞壁ペルオキシダーゼも NADPHオキシダーゼとともにパターン認識受容体(PRR)の制御下にあり,両酵素が協調していることが明らかとなった。一方,NADPH オキシダーゼの1つ RbohD に注目し,ペルオキシダーゼと相互作用について調べた。興味深いことに,rbohD 変異体においては細胞壁におけるペルオキシダーゼの蓄積量が低下し,さらに免疫沈降で回収された沈降物のスルフェン酸化程度は野生型と比べて大きく減少していた。以上の結果は,RbohD は構成的に生成する H2O2 を通して細胞外ペルオキシダーゼのスルフェン酸化を調節しており,この翻訳後修飾を介してペルオキシダーゼの安定化や ROS 生成のプライミングが行われているものと推察した。事実,野生型植物をジスルフィド結合阻害剤で前処理すると,MAMP 誘導性 ROS バーストが著しく低下した。これら結果は,ROS バーストの準備・実行プロセスにおける細胞膜・壁間の機能的な相互作用の存在を新たに示唆するものであり,今後の解析が強く期待される。
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J. Gen. Plant Pathol.
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