研究課題/領域番号 |
18K05650
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
荒川 良 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (10159494)
|
研究分担者 |
鈴木 紀之 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (00724965)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | メスグロハナレメイエバエ / チビクロキノコバエ / 生物的防除 / 土着天敵 / 二重攻撃 |
研究実績の概要 |
高知県で発見された土着天敵のメスグロハナレメイエバエは、成虫は飛翔性の微小昆虫を幼虫は土壌中のハエ目幼虫などを捕食する。本種はイチゴなどの害虫として知られているチビクロバネキノコバエに対しては、成虫が成虫を、幼虫が幼虫を捕食する二重攻撃を行うことからから、その防除資材として利用が期待されている。しかし、これまで本種のチビクロバネキノコバエに対する捕食効率等は明らかにされていないので、2018年度はメスグロハナレメイエバエ成虫および幼虫のチビクロバネキノコバエ成虫および幼虫それぞれに対する捕食能力を実験室内で調べた。 実験は、まず、羽化後24時間以内のメスグロハナレメイエバエ雌成虫を5cm×5cm×10cmのプラスチック飼育ケースに1頭入れ、25±1℃に設定したインキュベーター内に24時間絶食状態で維持した。次に、羽化後24時間以内のチビクロバネキノコバエ成虫を雌雄区別せず、10、20、40、60頭のいずれかの密度で入れた。そして、24時間後、飼育ケース内のチビクロバネキノコバエの死亡数を数えた。その結果、チビクロバネキノコバエの密度が高まると被捕食数も上昇するが、被捕食数は約40頭に達すると頭打ちになることが分かった。一方、メスグロハナレメイエバエ幼虫のチビクロバネキノコバエ幼虫に対する捕食数に関しては、両種幼虫とも孵化後2日齢同士、5日齢同士でメスグロハナレメイエバエ1頭に対して、チビクロバネキノコバエ10頭を与えて、24時間後の捕食量を調べた結果、前者では6.9±0.8頭、後者では8.4±0.5頭(10回反復)となった。 直接観察では、メスグロハナレメイエバエ成虫幼虫とも、チビクロバネキノコバエ成虫幼虫それぞれに対して、体液を吸い尽くす前に捕食を終えるることが普通に認められたことから、今回の実験で得られた数値は捕食数ではなく、攻撃数と判断するのが良いと思われた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで知られていなかったメスグロハナレメイエバエ成虫のチビクロバネキノコバエ成虫に対する捕食能力が明らかとなった。また、メスグロハナレメイエバエ幼虫のチビクロバネキノコバエ幼虫に対する捕食能力についても不十分ながら知見を得ることができた。また、捕食行動の直接観察ではメスグロハナレメイエバエ成虫、幼虫ともチビクロバネキノコバエ成虫、幼虫それぞれを捕食する際、体液を完全に吸い尽くすことがあまりないことも判明し、この性質は生物的防除資材として利用する際に、有利な性質になり得ると考えられた。
|
今後の研究の推進方策 |
メスグロハナレメイエバエ成虫および幼虫のチビクロバネキノコバエ成虫および幼虫それぞれに対する捕食能力について、さらに調査するとともに、実験室内のケージおよびビニールハウスにおいてイチゴのポット栽培、プランター栽培を行い、チビクロバネキノコバエを発生させてから、メスグロハナレメイエバエえを放飼し、その防除効果を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
メスグロハナレメイエバエ成虫の飼育にはキイロショウジョウバエ成虫を与えており、キイロショウジョウバエ幼虫の飼育には専用の餌培地が必要である。また、メスグロハナレメイエバエ幼虫およびチビクロバネキノコバエ幼虫の飼育にはブラインシュリンプ耐久卵を代替餌として与えて飼育する。2018年度はこれらの飼育が順調に行われ、飼育容器の再生利用も行ったことから、予定したほどの餌、飼育容器を使用せずにすんだため、残金が生じた。2019年度はビニールハウスでの放飼試験も計画しているので、より多くのメスグロハナレメイエバエやチビクロバネキノコバエを飼育する必要があり、これらの飼育経費に当初計画に上積みして使用する。
|