研究課題/領域番号 |
18K05650
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
荒川 良 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (10159494)
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研究分担者 |
鈴木 紀之 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (00724965)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 土着天敵 / メスグロハナレメイエバエ / チバクロバネキノコバエ / 生物的防除 |
研究実績の概要 |
イチゴを栽培したビニールハウスにおいて土着天敵メスグロハナレメイエバエ(以下ハナレメ)のチバクロキノコバエ(以下キノコバエ)の防除効果を調べるために、高知大学南国キャンパス内のビニールハウス(6mx12m)で放飼試験を行った。ビニールハウスは中央部をビニールシートで2分割し、一方を天敵放飼区、他方を無処理区とした。両区それぞれに3段のプランタースタンドを4個設置して、230mm×655mm×180mmのプランターを各段に配置し、イチゴを3株ずつ定植した。2019年11月10日に両試験区ともにキノコバエ成虫の発生が確認できたので、各区プランタースタンド最上段のプランターの上部に黄色粘着トラップを1枚ずつ設置するとともに、羽化後1週間以内のハナレメ成虫を雌雄10匹ずつ放飼した。放飼はその後1週間間隔で続けた。放飼日には黄色粘着トラップを回収し、新しいトラップを設置した。そして粘着トラップに付着したキノコバエとハナレメ成虫の数を記録した。試験は2020年3月24日まで行い、最終日にキノコバエの食害によって枯損したと思われる株数を数えた。 試験の結果、天敵放飼区と無処理区に設置した粘着トラップ1枚に付着したキノコバエの個体数の日当たり平均値はそれぞれ7.3±1.6匹、13.7±2.0匹となり。無処理区の方が有意に多くなった(t検定、p<0.05)。天敵放飼区の4枚の粘着トラップに付着したハナレメの日当たり平均数は7.7±1.0匹になった。プランター内でハナレメの新たな羽化の有無は確認できなかったが、放飼数の大半が粘着トラップに捕獲されることはないことが明らかになった。枯損した株は天敵放飼区で1株、無処理区で8株であった。以上より、ハナレメはイチゴ栽培ハウスにおいて、キノコバエの密度と被害を抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土着天敵メスグロハナレメイエバエ(以下メスグロ)は成虫が地上部でチバクロバネキノコバエ(以下キノコバエ)の成虫を、幼虫が土中でキノコバエ幼虫を捕食するため、キノコバエに対しては二重の攻撃による防除効果が期待される。本課題のこれまでの研究ではキノコバエ成虫、幼虫に対する捕食能力を調査し、優れた捕食能力を示すこと、キノコバエ幼虫を補食して発育したメスグロ成虫は室内飼育で代替餌のブラインシュリンプを捕食して羽化した成虫より大型になることも明らかになった。さらに、イチゴを栽培したビニールハウスにおける放飼試験でキノコバエの発生を抑制し、イチゴの枯損を抑える可能性も見いだされた。以上のことから本課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度になるが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、高知大学では令和2年3月から大学における研究活動の自粛が通告され、四月以降の研究実施のめどがつかない状態である。最低限メスグロハナレメイエバエとチバクロバネキノコバエの室内飼育系統の維持を行うが、研究自粛が解除されることを前提に、今後も室内実験でハナレメのキノコバエに対する捕食能力を追試験として調査する。さらに、近年高知県ではキュウリの栽培施設においてキノコバエの発生・被害が認められているため、野外実験が行えるような状況になれば、実験用ハウスでキュウリを栽培し、ハナレメのキノコバエに対する防除効果を調査する。また、近年のイチゴ栽培では受粉用のミツバチの減少が問題となっていることから、ハナレメ成虫にイチゴの受粉能力があるかどうかを、新たな課題として室内試験で明らかにする。もし、メスグロがイチゴの受粉能力を有していることが明らかになると、キノコバエ成虫・幼虫に対する二重の防除効果に加えて、よりイチゴ栽培に役立つことが明らかになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題における研究成果を2020年3月に名古屋で開催される第六四回日本応用動物昆虫学会大会で発表する予定で旅費申請を行ったが、新型コロナウイルス対策のため、学会の開催が中止された(発表自体は認められる)ため、その旅費が使えなくなり、時期も3月になっていたため、次年度に回さざるを得なくなった。新型コロナウイルス対策の解除されるめどがつかないので、今年度利用できなかった旅費を次年度回しにすることも難しいので、天敵メスグロハナレメイエバエ、被捕食者キノコバエの飼育にかかわる資材、餌等の経費、消耗の著しいビニールハウスの修理費等に使用する予定である。
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