研究課題
申請者らはフォスファチジン酸脱リン酸化酵素(DS1-PAP)の1遺伝子の抑制で、糸状菌・卵菌・細菌・ウイルスに耐病性を示すことを明らかしている(広耐病性と称す)。本計画では、①ゲノム編集で作製したDS1-PAP欠損ベンサミアナ植物(DS1植物)を用いて、広ストレス耐性の分子機構をトランスクリプトーム、メタボローム解析を通して解明すること。②ベンサミアナ植物ゲノムより単離したDS1-PAPプロモーターとレポーター遺伝子(GUS)との融合遺伝子を導入した形質転換植物と病原体エフェクター、植物cDNA、および化合物ライブラリーを利用し、PAP発現を誘導・抑制するエフェクター、植物cDNA、化合物を選抜する。③in vitroでのDS1-PAP活性を指標に活性化・阻害剤の選抜を行う。DS1-PAPを標的にした広耐病性機構・DS1-PAP発現・DS1-PAP活性阻害剤を利用した、新奇防除法の確立につながる基礎研究を目的にしている。今年度はDS1-PAP欠損ベンサミアナ植物(DS1植物)をゲノム編集で作製することを行った。ゲノムDNAを鋳型にしたダイレクトシークエンス解析から、変異株の候補を4系統の候補株を得ることができた。また、ベンサミアナ植物ゲノムより単離したDS1-PAPプロモーターとレポーター遺伝子(GUS)との融合遺伝子を導入した形質転換植物の作出も行った。カナマイシン耐性を指標に選抜を行い、10系統のカナマイシン抵抗性株を得ることができた。それぞれのT1種子を播種したカナマイシン耐性株のゲノムDNAを鋳型にNPTII遺伝子の有無で組み換え体の選抜を行い、10系統全てが組み換え体であることが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
DS1-PAP欠損ベンサミアナ植物(DS1植物)を4系統の候補株を得ることができた。また、ベンサミアナ植物ゲノムより単離したDS1-PAPプロモーターとレポーター遺伝子(GUS)との融合遺伝子を導入した形質転換植物の作出も行うことができたことから、概ね予定通り研究が進んでいると判断した。
今後はゲノム編集で作製したDS1-PAP欠損ベンサミアナ植物(DS1植物)4系統の候補株から、完全に欠損した植物をスクリーニングする。また、ベンサミアナ植物ゲノムより単離したDS1-PAPプロモーターとレポーター遺伝子(GUS)との融合遺伝子を導入した形質転換植物に関して、ホモ個体を選抜し解析へと進める。さらに、in vitroでのDS1-PAP活性を簡易的・高感度で検出する実験系の構築を進める。
前年度は実験材料の作出が主な内容であったため、解析に使用予定の予算が一部残る結果となった。次年度は解析作業が中心となるため、そのための消耗品等に使用する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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