現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
繁殖地である九州北部沿岸域の砂浜を採集し、ガラス温室において現地で採種したハマタマボウキの種子を砂地に播種し、ハマタマボウキの育苗を試みた。また、対象区として、アスパラガスの栽培用土壌(野菜の栽培土)にも同様にハマタマボウキの種子を播種し、育苗を行った。その結果、ハマタマボウキは砂地および野菜栽培土いずれの土壌においても栽培が可能であることを見いだした。これらの結果は、ハマタマボウキは必ずしも砂地での繁殖が必要不可欠ではなく、砂地以外の普通の土壌でも繁殖が可能であることを示しているにもかかわらず、ハマタマボウキの繁殖地が砂浜のみであることを考えると、現在の自生地は、他の植物の侵入が困難な砂浜地までハマタマボウキの生育地が後退した結果である可能性が示された。 また、自然感染個体から原因となる病原菌を分離し、接種試験を行った結果、罹病化の原因菌として、Phomopsis asparagi, Diaporthe unshuensis, Neopestalitiopsis spp., Alternaria spp., Fusarium acuminatum, およびF. tricinctumの植物病原糸状菌類が確認された。これらの病原糸状菌のうち、P. asparagiはアスパラガス茎枯病の原因菌であるとともに、Alternaria属菌はアスパラガス斑点病の原因菌であることから、ハマタマボウキと食用アスパラガス両方に感染できる可能性が示唆された。また、これらの糸状菌以外の病原菌については、食用アスパラガスへの病害の報告はないため、今後、ハマタマボウキから分離された病原糸状菌の食用アスパラガスへの病原性の可能性について調査する必要があると思われる。さらに、自然発病罹病個体からは本属菌以外の糸状菌も複数種類分離されており、これらの糸状菌の病原性の可能性についても解明する必要がある。
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