研究課題
我が国の食用アスパラガス病害の90%以上は植物病原菌による病害で、中でも、アスパラガス茎枯病は一旦罹病するとその根絶は極めて困難であるにも関わらず、食用アスパラガス種内には病気に強い品種が見つかっていない。アスパラガスでは耐病性品種の育成が強く望まれているが、本植物は多年生で交雑しにくく、品種育成には多大な年数がかかり、かつ、アスパラガス品種内には耐病性形質が存在しないなど、耐病性品種育種のハードルは極めて高い。申請者らの研究チームは、日本産アスパラガス植物の一種であるハマタマボウキと食用アスパラガスとの交雑種が、茎枯病に耐性があることを世界で初めて明らかにした。研究対象となるハマタマボウキは、日本固有種の一種で九州北部沿岸のみに自生する希少種であるため、生息域は限定的で非常に狭く、本植物の病害記載が存在しないことから、病害に強い植物であると認識されていた。しかし、近年の現地調査と昨年度の病害調査から、罹病化したハマタマボウキを発見しており、複数種の植物病原菌類によって複合的に感染している背景を明らかにした。これらの結論は、従来のハマタマボウキがもっている病気に強いという認識を覆すことを示唆した。同様に、ハマタマボウキ自生地近隣は、九州の食用アスパラガスの大生産地であることから、アスパラガス属植物間の相互感染による新規病害の発生や病害の進展化、希少種の生息域の減少が懸念される。さらに、ハマタマボウキの持つ耐病性のポテンシャルから、育種研究を目的とした乱獲や国外への流出が耐病性品種の育種の障害となる可能性が示唆される。そこで、ハマタマボウキの植物病原菌によって発生する病害の生物的防除を目的に、ハマタマボウキの根圏に生息する微生物を分離し、根圏微生物の拮抗性を利用した生物的防除の可能性について検討する。
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