研究課題/領域番号 |
18K05653
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
大島 一里 佐賀大学, 農学部, 教授 (00176869)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子進化 / 分子時計 / 拡散 |
研究実績の概要 |
アブラナ科野菜類の多くは地中海沿岸から中東地方を起源としており,農耕開始から現代まで人類の食料としてだけでなく,病原体の侵入や拡散に大きな影響を与えており,代表者はこれまでユーラシアやオセアニア大陸などの野菜類から病原ウイルスを採集後,網羅的にゲノム解析し分子進化的に分析してきた。その結果,新宿主へ適応するために組換えや再集合そして変異を行いながら,雑草のウイルスが農作物に感染する新興病原ウイルスとなり起源地から時間をかけて拡散し現在のように様々な国々で多様化してきたことを明らかにしてきた。そこで本研究では,これまで分析してきた大陸に加えて,我が国を含めた全大陸と対象地域を地球規模に拡げ,ウイルス調査を海外協力者と行い,侵入や移動の年代分析を伴った分子疫学的な拡散経路世界地図を植物病原体として世界で初めて完成させると共に,過去の進化を検証しつつ,次世代のステップである病原体の未来進化予測の基盤を作る。これまで独自に蓄積してきた情報に加えて,農作物や人の移動経路を考慮しながら,ウイルス病原体が起源地から世界中にどのように拡散したのか,日本にどのように侵入したのか,大陸的な地球規模での視点から,国内だけでなく地球規模での拡散年代を含めた,病原体の拡散経路世界地図を描く。また得られたデータをもとに海外協力者と協力し,未来の病原ウイルスの進化予測基盤を作る。元年度は特にスーパーコンピューターを利用することにより解析時間の短縮に成功し,結果を効率よく出せるようになった。その結果,現在論文2報の投稿準備ができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
元年度の本研究では,カブモザイクウイルスとジャガイモYウイルスについて農水省などから分譲してもらった日本産株も含めて1960年から2016年までの半世紀に渡る300分離株についてゲノム解析そしてそれらの病原性の調査が終わり,現在ではさらに,ウイルスの三大推進力の一つである組換え解析が終了し,日本や地球規模での組換え型の分布が把握でに成功した。次の研究としては,ユーラシア大陸内でウイルスがどのように拡散したのか,そして日本にはいつウイルスが入ってきたのか,などを最先端のバイオインフォマテックスを用いて解明している。膨大なゲノム配列データを使用しているので,結論を導き出すにはそれなりの時間が必要であった。しかし現在両ウイルスについて,ユーラシア大陸内の拡散経路が明らかとなり,現在では投稿論文をまとめ,投稿準備ができるところまでたどり着いた。現在海外の研究者らに校閲を依頼しており,近々両論文の投稿予定である。おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
バイオインフォマテックスの中でも最先端の領域である,年代解析ソフトウェアーが進展し,解析方法も改良され,その方法を習得した。そこで,最新のソフトウエァーを使い,ユーラシア大陸,更には国内でのウイルスの拡散について追跡調査を行っている。分離株数が膨大であるために,また試行錯誤して解析技術をアップデートして解析しているために,1クールの解析に数か月を費やすが,スーパーコンピューターを利用することにより解析時間の短縮に成功し,結果を効率よく出せるようになった。現在では,カブモザイクウイルスについては,1.ユーラシア大陸での拡散経路について,2.日本国内での拡散経路,3.地球規模での拡散経路の順に投稿を予定しており,2020年度内には,予定していた主な論文予定が公表予定である。またジャガイモYウイルスのユーラシア大陸での拡散経路が明らかとなり,ヨーロッパが本ウイルスのハブになっていることが明らかとなった。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析が個人所有のパソコンから,スーパーコンピュータを使って大量解析できることに成功しために,個人所有パソコンに使用する予定の周辺機器の購入をしなくて済んだ。また,ウイルスのゲノム解析を予定していたが,今年度の公表予定論文で使用予定ゲノム解析をしなくても十分なデーターが取得できたために,今年は物品費を予定ほど使わないで済んだ。次年度で公表予定の論文のデーターには使用予定である。
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