広域でのサンプリングが困難なため,植物ウイルスの進化や系統地理学的な歴史はほとんど分かっていない。植物ウイルスは地球規模で農業に影響を及ぼしており,それらの移動時期や経路を解明することは,植物保護に有益である。本研究の系統地理学的・分子時計的解析から,野菜の重要な病原体であるカブモザイクウイルスが,ユーラシア大陸の歴史的な交易路であるシルクロードを辿って17世紀頃から西から東へ移動していることが明らかになり,一方ジャガイモウイルスYは,ヨーロッパがハブとなって世界各地に拡散しているようであった。本研究により,重要な植物ウイルスの感染経路やその時間について複雑かつ詳細に明らかにすることができた。
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