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2018 年度 実施状況報告書

サリチル酸配糖化酵素を介した植物ウイルス間の病原性相乗作用に関する分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K05655
研究機関宮崎大学

研究代表者

竹下 稔  宮崎大学, 農学部, 教授 (00304767)

研究分担者 増田 税  北海道大学, 農学研究院, 教授 (60281854)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードサリチル酸配糖化酵素遺伝子 / サリチル酸
研究実績の概要

Cucumovirus属に含まれるキュウリモザイクウイルス(CMV)と Potyvirus属に属するカブモザイクウイルス(TuMV)は双方共に広範な宿主域を持つ最重要植物病原ウイルスである。これらの異種ウイルスは、農業現場において、ダイコンに重複感染すると単独感染より激しい病徴を誘導する。この現象は病原性相乗作用(シナジー)と呼ばれ、自然界では他の異種ウイルス同士の組合せでも頻繁に認められる。シナジーが引き起こされたキュウリやトマトなどの主要農作物では甚大な被害が認められている.
今年度はCMVとTuMVを用いて、植物ウイルス間のシナジーの分子機構解明を開始した。本研究ではシナジーを享受する側のCMVと介助する側のTuMV間のシナジーに着目した。CMV-TuMV間のシナジーにおいては、CMVの相対蓄積量が単独感染時と比べて、著しく上昇するが、TuMVはむしろ減少する。蛍光タンパク質であるDs-Red2を発現するCMVとEGFPを発現するTuMVをNicotiana benthamianaに接種し、感染部位を可視化した。両ウイルスの重複感染部位におけるサリチル酸配糖化酵素遺伝子 (SAGT) の転写物とウイルスRNAの相対蓄積量を解析した結果、CMV由来の赤色蛍光が強まっていない段階ではSAGT 転写物とウイルスRNA共に単独感染時と著しい差異が認められなかった。しかしながら、CMV由来の赤色蛍光が強まった段階ではSAGT転写物とCMV RNAで上昇傾向が認められた。以上の結果から、シナジーが生じている部位では、SAGTの発現が上昇し、サリチル酸関連の防御応答レベルが相対的に低下する可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

SAGTはSAを配糖体化し、SAGへと可逆的に変換する代謝を触媒する。SAGはSAと異なり、植物基礎抵抗性を活発化させる機能を持ち合わせていない。これは、すなわち植物におけるSA関連基礎抵抗性の緩和をもたらし、CMV-TuMV間の感染初期相互作用では局部競合の緩和への転換を決定づけると推察している。この仮説の立証の第一段階として、SAGT転写物の相対定量を実施した。シナジー状態が始まっていない段階では、SAGT転写物が優位に蓄積しておらず、一方シナジー状態が進んだ段階では、SAGT転写物が優位に蓄積していた。このように本仮説と一致する結果が得られたため、おおむね順調に進展していると判断された。

今後の研究の推進方策

シナジーにおけるSAGT遺伝子転写物の相対蓄積量が仮説と一致することが確認されたため、次の段階として、重複感染ならびに単独部位において、SAGTの代謝産物であるSAG,SAを比較定量する。これによって、SAGT遺伝子がCMV-TuMV間の感染初期相互作用では局部競合の緩和への転換を決定づけることを確認する。引き続き、SAGT遺伝子のサイレンシングCMVベクター,SAGTサイレンシング植物,SAGT過剰発現植物を作製し,SAGTのシナジーへの関与を解析する.我々はSAGT遺伝子の発現をサイレンシングした場合は,SAの蓄積量が上昇し,SA関連基礎抵抗性が強化されるため,CMV-TuMV間の感染初期相互作用で観察される局部競合が継続し,シナジーは生じにくいと推測している.一方、SAGTを過剰発現させた場合は、シナジーが容易に生じると推測している。この仮説を多角的に立証していく。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 植物ウイルス間の病原性相乗作用に関する分子機構の解析2019

    • 著者名/発表者名
      大霜和倫・小田裕太・小林優大・夏秋知英・増田 税・竹下 稔
    • 学会等名
      日本植物病理学会

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公開日: 2021-12-27  

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